たきぶろぐ

「大人」になりたくない人の雑記

欅坂46 『黒い羊』の歌詞を考察する。黒い羊は欅ストーリーのフィナーレの曲。

たきです。

明日のMステスーパーライブで欅坂46は『黒い羊』と『角を曲がる』を披露します。角を曲がるはまだCDにも収録されておらず、ライブで披露されたのもドーム公演のみですし、黒い羊は久しぶりの披露なので楽しみですね。

今日はその中でも『黒い羊』の歌詞を解釈していきたいと思います。

そもそも「黒い羊」ってどういう意味?

一般的に羊は白色のイメージを持たれている方が多いと思います。

黒い羊は白色の羊の群れの中では悪目立ちしてしまうため、「のけ者」「変わり者」「厄介者」という意味になります。

この「厄介者」という言葉は『黒い羊』の楽曲の中にも出てきます。

欅坂46 『黒い羊』歌詞の考察

他人とは違う道を行く「僕」

Aメロから主人公「僕」の他人とは違う道を行く様子が見てとれます。

 信号は青なのか それとも緑なのか どっちなんだ
あやふやなものは はっきりさせたい

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

信号は緑色なのに「青信号」と呼ぶ人が多いですよね。

主人公の「僕」はこのあやふやなものをはっきりさせたい性格のようです。

そして、この「あやふやなもの」は、時と場合によってコロコロと意見を変えて黒い羊にもなり、白い羊にもなる、あやふやな人間のことを暗示しているのではないかと思います。

夕暮れ時の商店街の雑踏を通り抜けるのが面倒で
踏切を渡って 遠回りして帰る

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

大体の人は夕暮れ時の商店街をそのまま通り抜けますが、主人公の「僕」は面倒で踏切を渡って遠回りをして帰ります。

「踏切」というのがキーワードで、同じナスカさんの作曲した『避雷針』という曲があるのですが、避雷針では主人公の「心」を「踏切」と表現しています。

この踏切が開いていて渡っているということは、避雷針である人と出会って、心を開いた後であることが窺い知れます。

ここも、商店街の雑踏を通り抜ける人を白い羊、主人公の僕が黒い羊であることを暗示しているのではないかと思います。

集団に対して否定的な感情を持つ

放課後の教室は苦手だ その場にいるだけで分かり合えてるようで
話し合いにならないし 白けてしまった僕は無口になる
言いたいこと言い合って 解決しようなんて楽天的すぎるよ

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

学生の人は共感する人多いんじゃないんでしょうか。僕もすごい共感しました。

放課後の教室っていくつかのグループに分かれて談笑している人が多いと思うのですが、ここでいう「その場」はそのグループ(集団)を示しているものだと思います。

「話し合いにならない~無口になる」は、グループの中のリーダー的存在に嫌われないように、みんな自分の意見を変えてリーダーに意見を合わせてしまい、話し合いになりません。それを見た主人公は白け、呆れてしまい、無口になります。

「言いたいこと言い合って~楽天的すぎるよ」は、言いたいことを言い合って解決しようとしても、結局はみんなリーダー的な存在の人に意見を合わせてしまい、解決しようとしたって解決できるわけがない。それで解決できると思ってるなんてのんきだな。という主人公の気持ちが表れている部分になります。

誰かがため息をついた
そう それが本当の声だろう

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

そう思っていたのはどうやら主人公だけではないようです。

自分の意見を押し殺して他人に合わせる様子を見て、教室にいた誰かがため息をつきました。

「他人に意見を合わせるの疲れる」というグループ内の人か、その様子を見ていた人間かは分かりませんが、いずれにせよ「他人に意見を合わせるなんてめんどくさい、疲れる」というのが彼女ら、彼らの本当の声でしょう。

やけくそになる主人公

黒い羊 そうだ僕だけがいなくなればいいんだ
そうすれば止まってた針はまた動き出すんだろう?
全員が納得するそんな答えなんかあるものか!
反対が僕だけならいっそ無視すればいいんだ
皆から説得される方が居心地悪くなる
目配せしてる仲間には 僕は厄介者でしかない

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

サビの冒頭は主人公がやけくそになって吐いたセリフだと思います。

自分が周りと意見が食い違っても周りに合わせることはせず、自分の意見を貫いている。それを周りは邪魔ものだ、厄介者だと白い目で見る。

それを主人公は知っていて「僕が居なければ物事は進むんだろう?」とやけくそになり、そう吐き捨てました。

全員が納得する答えなんかない、反対が僕だけなら無視すればいい。

「目配せしてる仲間」は、恐らく「俺、私に意見を合わせろ」と目配せしてるグループのリーダー的存在。主人公は彼らにとって厄介者でしかない。

そんなのは主人公自身も分かっている。

人間関係で悩む主人公

真っ白な群れに悪目立ちしてる 自分だけが真っ黒な羊
と言ったって 同じ色に染まりたくないんだ 

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

真っ白な羊の群れに悪目立ちしている主人公。それは自分でもわかっていますが、それでも自分の意見を殺して(自分を捨てて)まで群れには入りたくない。

薄暗い部屋の明かりつけるタイミングって 一体いつなんだろう?
スマホには愛のない 過去だけが残ってる
人間関係の答え合わせなんか 僕には出来ないし
そこにいなければ よかったと後悔する

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

夕暮れ時の商店街を避け、遠回りして家に帰った主人公ですが、主人公は明かりをつけるタイミングがいつなのか、ふと疑問に思います。

薄暗い部屋は主人公が社会に対して絶望している様子、主人公の気持ちが落ちている様子を表しています。この薄暗い部屋(絶望に満ち溢れた世界)はいつになったら明るくなるのだろうか。

そんな中でスマホを見ていますが、スマホには「愛のない過去」だけが残ってます。

「愛のない過去」が何を示しているのか、歌詞には出てきませんが、恐らくかつての友達と撮った写真。

その友達とは仲が良かったけど、意見が合わず対立してしまい、仲違いしてしまう。

友達と意見を合わせて友達で居続けるか、友達と仲違いしてでも自分の意見を変えないべきか、人間関係の答え合わせは主人公1人ではできませんでした。

最初っから友達なんかなるんじゃなかった と主人公は後悔します。

黒い羊でいちゃダメなのか

人生の大半は 思うようにはいかない
納得出来ないことばかりだし 諦めろと諭されてたけど
それならやっぱ納得なんかしないまま
その度に何度も唾を吐いて 噛み付いちゃいけませんか

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

人生の大半は思うようにはいかない。納得できないこともあるし、あきらめろと言われたけど、納得しないで唾を吐いて噛みついて反抗してはいけないのか、黒い羊でいちゃダメなのかと考える主人公。

「全部 僕のせいだ」

No No No...
全部 僕の せいだ

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

主人公が学生だと仮定して、グループの調和が乱れたのも、友達と仲違いしてしまったのも、全部僕のせいだと自分を責めます。

黒い羊 そうだ僕だけがいなくなればいいんだ
そうすれば止まってた針はまた動き出すんだろう?
全員が納得するそんな答えなんかあるものか!
反対が僕だけならいっそ無視すればいいんだ
皆から説得される方が居心地悪くなる
目配せしてる仲間には 僕は厄介者でしかない
わかってるよ

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

1番のサビと同じです。僕が居なければグループの調和は乱されない。グループの人たちからすれば自分は厄介者だ。そんなのは主人公自身も分かってます。

僕は僕で居続けたい

白い羊 なんて僕は絶対なりたくないんだ
そうなった瞬間に 僕は僕じゃなくなってしまうよ
周りと違うその事で 誰かに迷惑かけたか 

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

ここでいう「白い羊」とは、自分の意見を殺して周囲に意見を合わせること。

主人公は黒い羊ですが、白い羊になった瞬間、自分を捨て、周りに意見を合わせると「僕」は僕じゃない「ほかの誰か」になってしまう。僕は僕で居続けたい。

周りと違うことで誰かに迷惑をかけたかと逆ギレみたいなことを言っていますが、主人公は他人に迷惑をかけているつもりはなく、あくまでも自分が正しいと思ったことを正直に言っているだけだという主張。

同調圧力をかけてくる大人に反抗する

髪の毛を染めろという大人は何が気に入らない
反逆の象徴になるとでも思っているのか
自分の色とは違う それだけで厄介者か

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

「髪の毛を染めろという大人」は周りに合わせろと言ってくる大人の比喩表現です。

「周りはなぜ黒髪なのに、なぜお前は茶髪なんだ。黒に染めろ。」
これ、実際にあった話で、2017年に大阪の府立高校で、地毛が茶色の生徒に黒染めを強要し、黒く染めないと登校させない、修学旅行にも参加させないというものがありましたね。
地毛茶色なのに「黒髪強要」で不登校…修学旅行も「参加認めない」大阪府立高の女子生徒が提訴:イザ!

「周りに合わせないからって反逆の象徴になるとでも思っているのか。」主人公は同調圧力をかけてくる大人に強く問いただします。

同調圧力をかけてくる大人は白い羊の群れの中にいる人間。つまり、歌詞の「自分の色」は「白」。自分(大人)の色とは違う、それだけで厄介者なのか?

黒い羊で居続けることを決める

Oh
自らの真実を捨て 白い羊のふりをするものよ
黒い羊を見つけ指をさして笑うのか
それなら僕らはいつだって それでも僕はいつだって
ここで悪目立ちしてよう 

出典:欅坂46『黒い羊』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

主人公は黒い羊のくせに白い羊のふりをする奴らに対しても異を唱えます。

本当の自分を捨て、白い羊の群れに入ったやつらよ、黒い羊を見つけ指をさして笑うのか。

笑われたっていい、こんな奴らみたいになってたまるものか、悪目立ちしてもいい。主人公は黒い羊であり続けることを決めました。

『黒い羊』は欅ストーリーのフィナーレの曲

歴代シングルの楽曲を受け継いだ歌詞

『黒い羊』と最も深く関係しているのは『不協和音』と『エキセントリック』です。

『不協和音』の不協和音を恐れない、群れを嫌う主人公の僕と、『エキセントリック』で周囲の人間、人間関係(スクールカースト)に絶望し、「変わり者でいい」と一人でいる僕。

『黒い羊』には「真っ白な群れに悪目立ちしてる 自分だけが真っ黒な羊 と言ったって同じ色に染まりたくないんだ」という歌詞があります。

この1フレーズだけでも不協和音やエキセントリックと深く関係していることが分かります。

しかし、不協和音では「僕は恐れたりしない」という歌詞がありますが、黒い羊では上にも書いたように、主人公は黒い羊で居るべきか、白い羊で居るべきか迷っています。

最終的には黒い羊で居続けることに決めましたが、不協和音の反抗心むき出しの主人公からは一歩大人になった印象を受けます。

 

黒い羊と関係しているのは不協和音やエキセントリックだけではありません。

上でちらっと言ったように、「踏切」という言葉からは『避雷針』、2番の「唾を吐いて」は『I'm out』、「噛みついちゃいけませんか」は『ガラスを割れ!』、最後の転調した後の「白い羊なんて~」の部分は『サイレントマジョリティー』、そして『黒い羊』の全体的なコンセプトである「自分を貫く、アイデンティティ」は『世界には愛しかない』を連想させます。

そして、どの作品もすべて「大人」を敵としている点では『大人は信じてくれない』もこれに入るでしょう。

黒い羊は欅の歴代シングル(例外として3rd,5thはカップリング)のいいとこ取りをした作品であると言えます。

勿論、秋元先生がそんな意図をお持ちなのかは分かりませんが、ここまで多いとそう考えざるを得ません。

 

黒い羊はこれまでの欅ストーリーを受け継ぎつつも、『アンビバレント』の「一人になりたい なりたくない」、つまり「白い羊になるか黒い羊のままで居続けるか」という自分に対する質問に、黒い羊で居続けることを決めた、アンビバの続きになる作品です。

9thからは2期生が加わるため、1期生のみでの楽曲は『黒い羊』が最後です。黒い羊は欅ストーリーのフィナーレの楽曲と言っても過言ではないと思います。