たきぶろぐ

「大人」になりたくない人の雑記

平手友梨奈(欅坂46)『角を曲がる』の歌詞を考察する。

平手友梨奈(欅坂46)『角を曲がる』

平手友梨奈(欅坂46)『角を曲がる』

たきです。

昨日は『黒い羊』の歌詞のを考察しましたが、昨日に続き今日はてち(平手)のソロ曲『角を曲がる』の歌詞を考察したいと思います。

昨日の記事はこちら→欅坂46 『黒い羊』の歌詞を考察する。黒い羊は欅ストーリーのフィナーレの曲。

自分は普通だと思っていた

みんながおかしいんじゃないのか 自分は普通だと思ってた
でも何が普通なのか その根拠なんかあるわけもなくて...

出典:平手友梨奈(欅坂46)『角を曲がる』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

『黒い羊』と同様、主人公の持つ疑問から始まります。

主人公「僕」は、自分が普通で周りがおかしいんだと思っていました。でも誰かから「お前はおかしい」とでも言われたのでしょう、自分は普通じゃないのかと疑問を抱きます。

でも何が普通で、何が普通じゃないのかその基準(根拠)はなく、結局自分がおかしいのか、周りがおかしいのかは分かりません。

もう誰もいないだろうと思った真夜中
こんな路地ですれ違う人がなぜいるの?
独り占めしてたはずの不眠症が 私だけのものじゃなくて落胆した

出典:平手友梨奈(欅坂46)『角を曲がる』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

疑問を解決しようと、誰もいないであろう真夜中に街を歩きます。

誰も居ないと思っていたのに、路地で人とすれ違いました。そこで主人公は自分だけのものだと思っていた不眠症が自分だけのものではないことに気づきます。

主人公は不眠症を「自分らしさ」「個性」と認識していて、それらを失った主人公は落胆します。

「らしさ」って何?

らしさって一体何?
あなたらしく生きればいいなんて
人生がわかったかのように 上から何を教えてくれるの?
周りの人間に決めつけられた 思い通りのイメージになりたくない
そんなこと 考えてたら眠れなくなった
だからまたそこの角を曲がる

出典:平手友梨奈(欅坂46)『角を曲がる』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

 「自分らしさ」っていったい何なんだろう。主人公は疑問に思います。

けれど大人は「あなたらしく生きればいい」と上から目線で、人生がわかったようにいってきます。それに対し主人公は、「上から何を言ってくんの?」と嫌悪感を抱きます。

「自分らしさ」が一体何なのか主人公は分かりませんが、周りの人に決めつけられたイメージにはなりたくない。

そんなことを考えていたら眠れなくなり、不眠症になってしまう。そして夜の街を歩きだすのですが、何度も何度も角を曲がります。

「また」角を曲がるということから、主人公が角を曲がったのはこれが初めてではなく、これまでも何度も何度も角を曲がってきたことが分かります。

主人公は「自分らしさ」とは一体何なのか、その答えをいくら考えても導き出せていないようです。

何もかもが中途半端

星空さえも中途半端だ 街の灯りが明るすぎて…
明日が晴れようと雨だろうと 変わらない今日がやって来るだけ

出典:平手友梨奈(欅坂46)『角を曲がる』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

主人公は自分らしく居たいけれども、群れを嫌い、「自分らしさ」が一体何なのかわからず自分らしく居ることもできず、中途半端です。

きれいな星空を見るには街の明かりが邪魔です。主人公も自分らしく生きたいけれども、周りの大人が邪魔する。きれいな星空は主人公を、街の明かりは周囲の人を示しています。

明日が晴れても雨でも、「自分らしさ」の答えを探して夜な夜な街を歩く、変わらない今日がやってくるだけ。

周りの人は自分に興味がない

本当の自分はそうじゃない こうなんだと
否定したところで みんな他人のことに興味ないし ...
えっ なんで泣いてんだろう?

出典:平手友梨奈(欅坂46)『角を曲がる』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

 本当の自分はそうじゃない、こうなんだと否定したところで、みんな自他人のことには興味がありません。

それに、主人公は不協和音、エキセントリックにもあるように、群れを嫌い、周りからは嫌悪感を抱かれているような人で、そんな主人公の声など誰も聞いてくれません。

「理解されない方が楽」とエキセントリックや避雷針で言ってきたにもかかわらず、周囲の人間が自分を理解してくれなくて泣いてしまいます。主人公も「なんで泣いてんだろ」と自分でも驚いています。

だって近くにいたって誰もちゃんと見てはくれず
まるで何かの景色みたいに映っているんだろうな
フォーカスの合ってない被写体が泣いていようと睨みつけようと
どうだっていいんだ
わかってもらおうとすればギクシャクするよ
与えられた場所で求められる私でいれば 嫌われないんだよね?
問題起こさなければ しあわせをくれるんでしょう?

出典:平手友梨奈(欅坂46)『角を曲がる』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

「黒い羊」である主人公を「白い羊たち」は無視し、景色の一部として認識しています。

「フォーカスのあってない被写体」はポートレートをイメージしてもらえれば分かりやすいと思います。ポートレートって大抵、人にピントを合わせて、背景はぼかしますよね。

背景で他人が泣いていようと睨みつけようと、背景はぼけているので、白い羊たちにとってはどうだっていい。

逆に主人公が「わかってよ」と訴えかけたらギクシャクします。

そこで主人公は「与えられた場所で、求められる私になれば嫌われないんだよね?」、言い換えると、「周囲の人間に合わせれば嫌われないんだよね?」と周囲の人間に問いかけます。

主人公が先ほどの部分で泣いていたのは、他人に認識してもらえず、わかってもらおうとすればギクシャクしてしまい、どうすればいいのかわからず泣いてしまったのかもしれません。

一人きりで角を曲がる

らしさって 一体何?
あなたらしく微笑んでなんて 微笑みたくないそんな一瞬(とき)も
自分をどうやれば殺せるだろう?
みんなが期待するような人に 絶対になれなくてごめんなさい
ここにいるのに気づいてもらえないから
一人きりで角を曲がる
Ah Ah Ah Ah

出典:平手友梨奈(欅坂46)『角を曲がる』
作詞:秋元康 作曲:ナスカ

主人公は「らしさって何?」という疑問を抱きつつ、周囲の人間に合わせようと努力します。

しかし、周囲の人間に「あなたらしく微笑んで」と言われ、主人公は笑いたくない自分をどうやれば殺せるだろう?と疑問に思います。

「みんなが期待するような人」とは、主人公が周りに合わせることができるようになる人になることですが、主人公はそれができませんでした。そして、「絶対に」と言っていることから、恐らく今後も「みんなが期待する人」になることはできません。主人公は周囲の人間に謝ります。

そして、背景の一部に溶け込んだ「黒い羊」の主人公は誰にも気づいてもらうことができず、一人きりで角を曲がります。

『角を曲がる』は平手の心を代弁した曲か

『角を曲がる』は平手が初出演で初主演を務めた映画「響 -HIBIKI- 」の主題歌として世に出ました。

映画「響 -HIBIKI-」を制作するにあたり、映画の月川監督と、響の原作者である柳本さんは二人そろって響は平手しかいないという思いを抱いていたようです。
参考:『響-HIBIKI-』の平手友梨奈がとんでもない「5つ」の理由 | シネマズ PLUS

また、月川監督は「角を曲がる」という曲に対して、以下のようなコメントをしています。

15才の鮎喰響と現在の平手友梨奈が重なり合ったような歌詞

出典:主題歌 映画『響 -HIBIKI-』公式サイト

響=平手という式が成立しているように思えます。

確かに歌詞を見てみると、平手や欅をイメージして書いたと思われる部分がいくつかあります。

「周りの人に~思い通りのイメージになりたくない」は周囲から「笑わないアイドル」「かっこいい」というイメージを持たれている欅や平手。

でも、欅のメンバーや平手は普通の女の子のように笑うし、かわいい曲だってある。周りの人に決めつけられたくないという平手や欅メンバーの代弁とも取れます。

そして、「あなたらしく微笑んでなんて~どうやれば殺せるだろう?」の部分は、去年一昨年あたりからTVでめったに笑顔を見せなくなった平手をイメージさせます。

ネット上で「平手笑えよ」などという投稿が多くありました。「笑いたくないのに笑えなんて。笑いたくない時は自分を殺せばいいの」という平手の気持ちともとることができます。

『角を曲がる』は平手のみならず、欅メンバーの心情を代弁し、一部の過激なファンへのメッセージともとれる楽曲だと思います。