たきぶろぐ

「大人」になりたくない人の雑記

無印良品(良品計画)・ユニクロは世界の市場を捨てるのか

去年から中国の新疆ウイグル自治区をめぐって、世界が大きく動いていますね。

今年1月にはアメリカがユニクロ製品を差し止め、7月にはフランス当局がユニクロに対し、ウイグル自治区に関する人権問題で捜査を開始。

無印良品は現段階で何か制裁を加えられるなどと言ったことはありませんが、海外にも出店をしているので、今後何かしらの措置をとられる可能性は否定できませんね。

これらの企業は中国市場に縋り付いて世界の市場を捨てるのでしょうか。

「ウイグルで強制労働」の確証はない

中国を擁護するわけではありませんが、アメリカやそのほかの国が言っている、「新疆ウイグル自治区で少数民族が強制労働をさせられている」ということですが、実際の所確証はないんですよね。

それを裏付ける証拠のようなものは出てきていませんし、中国を台頭させまいとする欧米各国による理不尽な「中国叩き」の可能性もあります。これは以前も記事を書きました。(欧米は「中国によるウイグル人大虐殺」の証拠を開示すべき - たきぶろぐ)

中国の綿生産量は世界第1位で、その生産量は約604万トン。そのうち約85%が新疆ウイグル自治区で生産されているとのこと(出典:(決断迫られるファストリ、無印。ほぼ全ての日本人が新疆綿使う現実どう考える? | Business Insider Japan))。計算すると、約514万トンもの綿が新疆ウイグル自治区で生産されているということになります。

ウイグルの人口が約2500万人とされていることから、新疆ウイグル自治区のすべての人が、この綿を栽培しているとすると、一人あたり205kgの綿を生産していることになります。

新疆ウイグル自治区の人口は、ウイグル族をはじめとする少数民族と、漢民族の合計値になります。もし仮に「少数民族のみに強制労働をさせている」というのであれば、ウイグル族の人口は約1271万人とされていることから、一人あたり約410kg生産することになります。

これをすべて人でやるのは効率が悪すぎますし、機械化した方が効率もよく、生産量を増やすこともできます。

中国は世界一の綿生産量となっていますが、実は国内生産分では国内の需要を満たせず、海外からも綿を輸入しています。輸入量を減らすため、国内生産量を増やしたいと思うはず。

わざわざ機械化せず、非効率な強制労働なんてさせる必要があるのでしょうか。

寧ろウイグル綿の使用を禁止することによって、新疆綿が使われなくなり、少数民族たちにお金が入らなくなる可能性もあります。それは良いことなのでしょうか。

世界的に新疆綿を使用しない流れになっている

しかし、世界的に「新疆ウイグル自治区ではウイグル族が強制労働をさせられている」と言われ、新疆綿の使用停止をめぐる動きが広がっています。

それは上でも書いた、アメリカによるユニクロ製品の差し止め、フランス当局によるユニクロの捜査。

そして、アメリカ政府はアメリカの企業に対して、「アメリカの法律に違反する危険性が高い」と注意しました。現段階ではアメリカの企業に対する発言ではありますが、アメリカに支社を置くような日本企業、そしていずれは新疆綿を使用している世界中の企業にも注意、取引停止などの圧力をかける可能性もあります。アメリカがファーウェイを排除すると、英国、ドイツ、日本などが追従して5Gの基地局からファーウェイを排除したこともありましたね。

そのため、リスク管理のできる企業は新疆綿の使用を停止しています。H&Mやミズノ、最近ではグンゼという下着メーカーもですね。

それでも使用をやめない無印良品・ユニクロ

新疆綿に対する無印良品の考え

今年4月、無印良品を展開する良品計画が、無印良品の製品に使用されている綿について、以下のように発表しています。

無印良品の店頭およびWEBサイトなどで販売する綿製品についてのお問い合わせを多数いただいており、改めて考え方を以下にまとめました。

はじめに、良品計画は事業活動において、各国・地域の法令や無印良品の思想を守り、人権の尊重や労働基準の管理に努めています。また、生産工程において法令や弊社の行動規範に対する違反が確認された場合には取引を停止する方針です。

無印良品は、天然素材が本来持つ機能を生かしたものづくりをすすめてきました。原料となる素材は、地球、動植物、生産者に余計な負荷をなるべくかけない方法で採取、栽培されたものを選択するよう取り組んでいます。また、それらは可能な限り生産地がトレースできるものを使用し、なかでも主要な原料は実際に生産地を訪れ、採取・栽培場所の状況や生産者のくらしを自分たちの目で確認しています。

この観点より、綿においてはオーガニックコットンを選択しています。一般的な綿の栽培には、農薬や化学肥料が比較的多く必要とされています。一方、オーガニックコットンは、農薬や化学肥料を3年以上使用していない土地で、自然の仕組みに沿って育てられます。従来の栽培方法よりも手間も時間もかかることや、適した気候や大地が必要なことから、世界の綿の生産量のうち1%程度しか生産されていません。環境負荷はもとより農家の方々の健康への影響も鑑み、1999年よりオーガニックコットンの使用を開始しました。無印良品は、インド、中国、トルコ、アメリカを含む世界各地からオーガニックコットンを調達しています。世界中を見渡し、探した素材です。商品開発者が実際に産地に足を運び、種まきや収穫体験を通じて農家の方々と交流し、その使用量を継続的かつ長期的に増やす努力をしてきました。無印良品の衣料品のすべての綿は2018年から、オーガニックコットンを100%使用しています。これらオーガニックコットンの栽培や生産の拡大を通じて、現地における優良な雇用機会を拡大し、そこで働く一般生活者の生活向上のお役に立てていると自負しております。

また、オーガニックコットンであることを明記するために、無印良品は綿と綿糸について世界基準である認証を得ています。この認証は、国際労働機関(ILO)が定める国際労働条約、国連のビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)と経済協力開発機構(OECD)の責任ある企業行動のためのデュー・ディリジェンス・ガイダンスに遵守しているか、毎年第三者機関が監査を行う仕組みになっております。これ以外にも、すべての生産パートナー企業とは、サプライチェーン全体の労働環境、人権尊重の方針を共有したうえで、外部の専門機関による工場監査を実施しています。多くのお問い合わせをいただいている新疆地区は新聞等で報道されている通り、中国産の綿の8~9割を占める広大な産地です。無印良品の綿を栽培する新疆地区の約5,000ヘクタールの農場等については、畑や作業者のプロフィール、人員計画を把握し、栽培スケジュールに合わせて第三者機関を現地に派遣し、昨年も監査を行っています。これまでの監査において、法令または弊社の行動規範に対する重大な違反は確認しておりません。無印良品は商品の原料となる綿から最終製品化までを、以上のようなプロセスで管理しております。

2015年に国連で採択されたSDGsの達成に多くの国や企業が取り組んでいる状況ですが、無印良品の理念と実践は当初よりSDGsを包含するものと考えております。さらにいえば、「困ったときはお互いさまです」「いつも、お陰さまで」「お疲れ様です」「もったいない」といった人間本来の思考や感情を通して、より実感できる心情としてこれらを世界の人々と共有し、「感じ良いくらしと社会」に向けた事業活動を今後もしっかりと行っていきたいと考えています。

無印良品のサプライチェーンの考え方について、詳しくは以下をご確認ください。
https://ryohin-keikaku.jp/sustainability/supply-chain/policy/

無印良品の原料調達の考え方について、詳しくは以下を確認ください。
https://ryohin-keikaku.jp/sustainability/activities/material

出典:無印良品の綿とサプライチェーンについて | ニュースリリース | 株式会社良品計画

長いので簡潔にまとめると、
「良品計画は人権侵害などが行われている工場とは取引を停止します。無印は天然素材を生かしたものづくりを進めていて、その観点からオーガニックコットンを使っています。無印はアメリカ、インド、中国、トルコからオーガニックコットンを調達していますが、それは世界中を見渡して、実際に現地を訪れて確認しました。新疆ウイグル自区では畑や作業者のプロフィールも把握している上、第三者機関にも調査を依頼しましたが、人権侵害や強制労働などは確認されていません。」

あのね、長すぎる。「オーガニックコットンとは3年以上薬品が使われていない・・」とか、それ関係ないでしょ。

「問題がないから、新疆綿を使っています」というのが無印良品、良品計画さんの考えだそうです。

「第三者機関」は信頼に値するのか

第三者機関とは、無印、良品計画ではない「第三者」によって構成された組織のこと。

無印はこの第三者機関・専門組織を毎年派遣して、監査を行っているとのことですが、この第三者機関はあてになるのでしょうか。

特に新疆ウイグル自治区は、街の至る所に監視カメラが設置され、警察が目を光らせ、幹線道路には検問がおかれ、行動が逐一監視されています*1

そして、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国においてもロックダウン・行動制限が課せられていました。

それなのに、日本から新疆ウイグル自治区に対して、毎年第三者機関を派遣できるのでしょうか。

それに、毎年綿花の栽培時期にスケージュールを調整し、監査しているとのことですが、これ本当に意味はあるのでしょうか。

例えるならば、学校公開。事前にこの日が学校公開、授業参観で親が学校に来ることは先生たちも分かっています。いつもは眠そうに授業をやったり、一方的にダラダラしゃべるだけなのに、授業参観の時だけやたら優しくなったり、生徒に発言させたり、はりきってる先生いますよね。

それと同じで、事前に「栽培時期に来る」と分かっているなら、その時だけ虐待などはせず、第三者機関が居ないところ、見ていない時期になってから暴力をふるったり、虐待をするといったこともあるのではないでしょうか。中国は都合の悪い部分は隠蔽するような国なので。

そもそも、監査結果が正確なのか。監査が中国当局の人間など立会いのもとで行われていたとすれば、中国は都合の悪い部分は隠蔽、改ざんするような国なので(大事なことなので2回目)、「人権侵害が行われていた」という監査結果も、中国当局によってもみ消される可能性も否定できませんよね。

第三者機関が日本の第三者機関なのか、中国の第三者機関かにもよりますが、仮に後者だとすれば、中国政府の「ウイグル自治区において強制労働、人権侵害はない」という発表に反した監査結果を出すことができるのでしょうか。出したらその瞬間、その第三者機関は行方不明になるでしょうね。

「第三者機関」は信頼に値するものなのでしょうか。

無印はなぜウイグル綿の使用を辞めれないのか

良品計画からの発表にもあるように、無印は中国以外の国からも綿(オーガニックコットン)を輸入、使用している。であれば、ウイグル綿の使用を中止し、他国からの輸入量を増やすなりすれば、問題はないはず。しかし、なぜそれができないのか。

それは無印良品が中国に依存しているためではないのでしょうか。

無印良品は海外にも出店をしており、その数550店舗。そのうち約半数の274店舗が中国にあります。

そのうえ、アメリカの無印子会社がアメリカ連邦倒産法チャプター11(日本で言う民事再生法)を申請するなど、経営が悪化。さらに、ヨーロッパでも苦戦をしています*2。参考記事は昨年のものですが、今年7月に発表された決算サマリーでも以下のように、欧米事業が苦戦していることが述べられています。

海外事業:東アジア事業、西南アジア事業中心に増収増益。一方、新型コロナウィルスによる影響を受け、欧米事業は苦戦。

出典:決算サマリー[PDF:722KB]|株式会社 良品計画

参考記事にもありましたが、欧米での事業苦戦はコロナ禍以前からのものであり、コロナの影響で、更に苦戦が強いられているとのようです。しかし、東アジアや西南アジアなどの店舗は増収増益。その中には勿論274店舗展開している中国も含まれています。

これと新疆綿の問題、何が関係あるの?って思うかもしれません。

先述の通り、新疆綿の使用を中止した企業や、新疆綿に関して何か発言をした企業はたくさんあります。が、それらの企業は中国政府や、中国国民から「報復」を受けます。

例えば、H&Mは新疆綿の使用を中止すると言った結果、中国最大のECサイト「アリババ」からH&Mの商品が消え、中国国内では不買運動も起こり、中国市場では28%の減少。

ナイキやZARA、GAPなどは中国政府によって輸入を停止され、テレビにナイキやアディダスの製品が映れば、ロゴにモザイクがかけられる始末。

もしこれらの「報復」が、海外事業が苦戦している中、唯一アジア・中国のみが順調な無印良品に向けられれば、無印の海外事業は軒並み苦戦を強いられること間違いなしでしょうね。

だからこそ、無印良品は新疆綿の使用をやめられないのではないでしょうか。

勿論、新疆綿が使用されているのは、無印良品の服のみですから、服以外のものは不買の対象にならないのかもしれませんが、ナイキは靴のロゴにもモザイクがかけられている以上、不買の対象は「企業全体」になり得ます。

ユニクロ(ファーストリテイリング)の発表。ずれてない?

続いて、日本を代表するファッションブランド、ユニクロを展開するファーストリテイリングの発表です。

ファーストリテイリンググループは、いかなる人権侵害も容認しないという方針の下、あらゆる形態の強制労働を厳格に禁止し、サプライチェーンのすべての企業にその順守を求めています。国際労働機関(ILO)などの国際機関が定める基準に沿って2004年に制定した「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」でもこの方針を明示し、生産パートナーには、業務の再委託や原材料の調達に際しても、この内容に準拠した企業とのみ取引を行うことを求めています。

中国新疆ウイグル自治区の人権問題を懸念する各種報告書や報道については認識しています。ファーストリテイリンググループの主力ブランドであるユニクロが製品の生産を委託する縫製工場で新疆ウイグル自治区に立地するものはなく、同地区で生産されている製品はありません。また、ユニクロ製品向けの生地や糸を供給する素材工場や紡績工場で、同地区に立地するものもありません。本年3月、「オーストラリア戦略政策研究所(Australian Strategic Policy Institute:ASPI)」が発表した報告書で、ユニクロと関連付けられたYoungor Textile Holdings Co. Ltd、およびQingdao Jifa Huajin Garment Co. Ltdについては、ユニクロとの間に取引はないことを確認しています。

一方、ファーストリテイリンググループはすべての取引先縫製工場および主要素材工場に対して、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」に基づいた適正な労働環境が整備、維持されていることを確認するため、第三者機関による監査を定期的に実施しています。さらに、工場の従業員が、雇用主から人権侵害など不当な扱いを受けた場合に当社に直接、匿名で訴えられるホットラインを設置、運用しています。これまでのところ、これらの監査やホットラインを通じて、強制労働が行われた事実は確認されていません。さらに、サプライヤーに対しては、調達する綿花の生産においても強制労働がないよう求め、確認しています。

ファーストリテイリンググループでは引き続き、製品が倫理的な環境で生産されていることを確認するため、サプライチェーン全体のデューディリジェンスを実施していきます。具体的には、二次取引先である素材工場のサプライヤーおよびさらに上流の工程を把握し、適正な労働環境が維持されていることを、国際的なガイドラインに基づき確認していきます。万一、報道されているような強制労働が確認された場合には、取引先工場に対し、当該サプライヤーとの取引停止を求めます。

ファーストリテイリンググループは、2025年までにサステナブルコットンの調達比率を100%とする目標を掲げています。今後も、生産過程において人権や労働環境が適正に守られたサステナブルコットンの調達を進めてまいります。

出典:新疆ウイグル自治区に関連する報道等について | FAST RETAILING CO., LTD.

ユニクロも「新疆ウイグル自治区においては問題ない」という認識。

無印のように「オーガニックコットンとは・・・」みたいな関係のないことを入れない辺り、読みやすい文でいいですね。

ただ、これずれていませんか?

ファーストリテイリングの発表では「ファーストリテイリンググループの主力ブランドであるユニクロが製品の生産を委託する縫製工場で新疆ウイグル自治区に立地するものはなく、同地区で生産されている製品はありません。また、ユニクロ製品向けの生地や糸を供給する素材工場や紡績工場で、同地区に立地するものもありません。」と言っています。

しかし、ウイグルで問題になっているのは、少数民族が「綿の収穫などに強制労働させられている」ということであって、工場で強制労働は無くても、問題は工場の前、綿花の収穫段階で少数民族が強制労働をさせられているのではないかという点。

ユニクロは「新疆ウイグル自治区にユニクロの縫製工場、素材工場はない」と言っていますが、新疆ウイグル自治区で強制労働によって収穫された綿を使用している可能性については言及もしていません。この点、どうなのでしょうか。

ちなみに、ファーストリテイリングの会長である柳井さんは「政治問題なのでノーコメント」と言っています。

 

ユニクロも無印同様、海外店舗約1500店のうち818店舗が中国大陸(香港を除く)にあります。

ユニクロの発表通り、新疆綿を使用していないということになれば、問題はないのですが、もし仮に新疆綿を使用し、更に使用停止ともなると、中国による「報復」が行われ、売り上げが激減するでしょう。

無印と同様の理由で、ユニクロも使用を停止できないのでしょうね。

ユニクロと無印は世界の市場を捨てるのか?

アメリカがではウイグル人権法が成立、EUも中国に対して制裁を加えています。

それによって、EUやアメリカが新疆綿をはじめとする、新疆ウイグル自治区で生産されたあらゆるものの輸入を停止したり、新疆ウイグル自治区と関係のある企業に制裁を加える可能性も否定できません。

EU・アメリカという世界大国が制裁を加えるなどをすれば、同盟国や、これらの国と関わりの強い国(日本含む)は、看過することができないはずです。となると、アメリカやEUに追従し、新疆ウイグル自治区と関わりのある企業の製品を輸入停止したり、店舗を閉鎖させるといったことも有り得ます。

そうなるとユニクロと無印は中国という市場に縋り付いていると、中国以外の市場を捨てることになりかねません。

どちらも海外事業の店舗の半数が中国大陸にあり、無印に至っては欧米は苦戦しているとまで認めているので、中国市場に縋り付いていた方が寧ろ良いのかもしれませんが(笑)。

ユニクロは中国以外の市場も好調ですし、ユニクロに限らず、同じファーストリテイリングが展開するジーユーも海外に店舗を展開していることから、影響が出ることは必至だと思われます。

ウイグル族が強制労働をさせられているという確証は確かにありませんが、世界が大きく動いているため、今後の事業・業績にも影響が出てくるため、新疆綿の使用を継続することによる、リスク管理はきちんとしておかないといけないのではないでしょうか。

「無印良品」「ユニクロ」というブランドイメージが大きく傷つき、日本国民からも愛想をつかされる可能性もありますしね。無印は「ブランドではない」ので、ブランドイメージは傷つかないですが。

無印良品(良品計画)・ユニクロは世界の市場を捨てるのか