たきぶろぐ

「大人」になりたくない人の雑記

櫻坂46「流れ弾」の歌詞を考察。現代社会を痛快に風刺。

櫻坂46の3rdシングル「流れ弾」。聴けば聴くほど楽なり、ハマる楽曲。個人的には、櫻坂の表題曲の中で一番好きですね。どの曲もすきではありますが、こんなにハマって一日に何十回も聞くのは、欅のアンビバ以来。

流れ弾MV

流れ弾に知らない間に撃たれていた

どっから飛んできた?流れ弾 知らない間に撃たれてた
Where did it shoot from?STRAY BULLET
なぜだか心は血を流してた

出典:櫻坂46『流れ弾』
作詞:秋元康 作曲:デレク・ターナー

この歌詞だけを見ると、この曲の主人公は戦争している地域にでも行ったのかと勘違いをしてしまいますが、この先の歌詞を見ると「流れ弾」は比喩表現であることが分かります。何の比喩表現をしているかは後を見てのお楽しみ。

主人公は戦争をしているような危険地帯に居るわけでもなく、銃撃戦に巻き込まれるような理由はない。しかし、突如どこかから流れ弾が飛んできて、それが体にあたった。なのに、体は血を流していない。血を流していたのは心だった。

普通に歩いているだけなのに

Hey!Guys!!Did you see that?
真っ黒なワンボックスカー 面白半分に銃口を向けたのか?
動画投稿中 どうせ拡散中 とうとう急上昇中 like like like

普通に歩いてるだけでも 不都合な出来事起きるなんて
それじゃ生きてるだけだって ああだのこうだの貰い事故
(Woo... woo...)誰が? 何のために? さあね Beats me!
火だるまになって炎上!(Wow wow wow wow wow)

出典:櫻坂46『流れ弾』
作詞:秋元康 作曲:デレク・ターナー

「ねえ、みんなあれ見た?」の英文からスタート。イメージとしては何か話題になっている動画を学校の友人などに「あれみた?」と聞いているのでしょうか。ではその動画の内容はなんだったのか。

真っ黒なワンボックスカー。一括りにするのは好ましくないですが、真っ黒なワンボックスカーと聞くと、何か危険なにおいがしますね。ワンボックスカーに限らずですが、真っ黒な車と聞くと高級車。暴力団や政府要人、身分の高い人が乗っているイメージがあります。その車に対して面白半分に銃口を向けます。銃口を向けると言っても、実際に銃口を向けるわけではなく、迷惑系動画配信者のような迷惑行為をしていたんでしょうね。

それを投稿した人は「面白い、これはウケるぞ」と思って動画を投稿するわけです。そして思った通り、拡散され、「Like Like Like」、いいねがみるみる増えていき、とうとう急上昇。急上昇はツイッターでいうトレンド、YouTubeでいう急上昇ランキング等。

動画を撮った人は「よっしゃ!急上昇だ!」と喜んでるわけですが、勿論銃口を向けられた側の人はただ黒いワンボックスカーに乗っていただけ。別に暴力団でも要人でも有名人でもない。それを「普通に歩いていただけでも」と車に乗っているいないにかかわらず、普通に歩いているだけでも誰かに動画を撮られて、不都合な出来事が起こる。それじゃあ生きてるだけで貰い事故に巻きこまれて碌なことにならない。

主人公は周囲の人に「誰が何のためにこんなことやってんの?」と聞きますが、周りの人も「さあね」と分からない様子。主人公も「Beats me!(わかんない!)」。感嘆符がついているから、「意味わかんない!ありえない!」といったニュアンスなのかな。

ただ街を歩いていただけなのに、動画を撮られてそれが拡散され急上昇に。完全な貰い事故で主人公に非は無いのに、火だるまになって炎上。

歌詞からは一旦離れますが、一般人の小室圭さんがNYで長い髪を束ねてポケットに手を入れて歩いていただけなのに、しつこくレポーターとカメラマンが追いかけ、それがニュースになり、コメント欄などではあーだこーだ喚いている輩が居ましたね。ちょうどいい事例だと思います。小室さんは何も悪いことをしていないのに、動画で撮られ拡散され、あーだのこーだの言われて炎上するっていう。

「リンチパーティー」の真意

今宵もどっかしらで顔隠してリンチパーティー(リンチパーティー)
ターゲットにはなりませんように・・・ いい子でいますから ねえ
こんなことしてたら誰も彼も家から出ない(家から出ない)
語り合おう 見つめ合おう 愛がなくちゃ 世界は終わる イェーーイ!
冗談じゃないよ流れ弾 そんなこととは無関係

出典:櫻坂46『流れ弾』
作詞:秋元康 作曲:デレク・ターナー

サビには「リンチパーティー」という物議をかもしそうなワードがあります。このワードだけ聞くと楽しんでリンチしていると捉えられ、これこそ炎上しそうですが、実際は勿論そんな意味ではありません。

今宵もネットのコメント欄やSNS等で顔も出さず、匿名で顔を隠して誰かを対象に誹謗中傷。挙句の果てに顔や勤務先、住所や電話番号など個人情報を特定し、無言電話をかける、荷物を送りつける。これらを楽しんでやっていることから、リンチをパーティーのように楽しんでいる、という意味を込め「リンチパーティー」という強烈な歌詞が生まれたのだと思います。

そして、主人公はただ普通に歩いていただけで、何も悪いことをしていないのに、ネットで行われている自分へのリンチに委縮し、「ターゲットにはなりませんようにいい子で居ますから」と謝罪。

でもこんなこと(=ただ歩いていた人を動画で撮って投稿し、リンチパーティーが開かれる)をしていたら、誰も彼も家から出ない。

顔隠して名前隠して一方的にリンチするだけじゃなくて、「語り合おう」「見つめあおう」と呼びかけます。他人に対する愛がないと世界は終わる。

主人公は何もしていない、ただ動画に撮られただけ。こんなネットリンチされて「冗談じゃないよ。流れ弾だよ。そんなこととは無関係」と言います。

「ここだけのトーク」が流出

Baby!What did you say?
ヤバいナイトクラブで ここだけのトークはあいつがやったのか?
マジか?特定中 嘘だろ?逃走中 Oh My! 謝罪中 
Dang!Dang!Dang!

その他大勢の中に紛れて 目立った弱者は袋叩き
さっきまでこっちにいたお前も あっちの側から撃つのかい?
(Woo... woo...)だって・・・やらなかったら きっと My turn
自分守るために 放火魔(Wow wow wow wow wow)

出典:櫻坂46『流れ弾』
作詞:秋元康 作曲:デレク・ターナー

一番の冒頭同様、周りが「ベイビー、あなた何を言ったの?」と言っています。これは恐らく主人公に対して言っていること。

ナイトクラブは広義では夜だけ営業される会員制のお店ですね。恐らくここではSNSやLINEなど、会員制の交流サービスのことを指しているかと思います。日中は仕事や学校などでSNSはなかなか見れないですが、仕事が終わり夜になるとみんなSNSを使い始める。

「ここだけのトーク」はLINEや、ダイレクトメッセージ、鍵垢にしていて外部に流出するはずのないもの。それが外部に流出したので、主人公は「あいつがやったのか?」と疑います。

やばいナイトクラブ(SNS)での「ここだけのトーク(LINEやDMなど)」がなぜか世間に出回り、主人公は「マジか!?特定される!」と特定の目から逃走しますが、「Oh!My!(なんてことだ!)」、特定されて謝罪に追い込まれます。

Dangはいくつか意味がありますが、いずれも困惑、憎しみ、怒りなどの意味で使われることが多いようです。ここだけのトークを流されて困惑していることや、特定されて謝罪に追い込まれたことへの困惑。トークの内容がどのようなものかは分かりませんが、法的に問題のないものであったら、何も悪いことしていないのに謝罪へ追い込まれた怒りなど...色々な感情があると思います。

「その他大勢の闇に紛れて 目立った弱者を袋叩き」は欅坂時代の『黒い羊』を彷彿とさせる歌詞。白い羊の中に一匹だけ黒い羊が居ると、周囲は黒い羊に向けて白い目を向ける。『黒い羊』は人を羊に喩えていましたが、本作では比喩は使われず直接的な表現になっています。

これまで友達と思っていた人も、ここだけのトークが流出すると、その他大勢の闇に紛れて主人公に銃口を向け始める。主人公はその人に対して「お前もそっち側の人間か?」と問いただします。

すると「お前」はこう答える。「だってやらなかったら私の番。私がやられるんだもん」。その人は自分を守るために主人公に銃口を向ける。いじめの構図と同じですね。同調圧力というか、集団心理というか。

主人公は「自分守るために放火魔になるのか」と、「お前」を罵倒。(MVでセンターの田村が叫んでいることから)

欠席裁判はチキンレース

明日は明日で別の誰かと エンドレスパーティー(エンドレスパーティー)
欠席裁判開かれるなら そりゃツルむしかねえ I got it!
疑心暗鬼になって誰もやめない チキンレースだ(チキンレースだ)
信じようよ 信じられようよ 信じ合わなきゃ 世界は終わる イェーーイ!

どっから飛んできた?流れ弾 知らない間に撃たれてた
Where did it shoot from?STRAY BULLET
痛みは感じなかった

出典:櫻坂46『流れ弾』
作詞:秋元康 作曲:デレク・ターナー

今日は今日でリンチパーティーが行われているのに、飽きずに明日は明日でまた別の誰かとリンチパーティー。それも終わることを知らないエンドレスパーティー。

欠席裁判は被告人が居ないまま進められる裁判。被告人は法廷に居ないので、自分の意見を主張できないのに、それをいいことに法廷では裁判が進んでいく。被告人は何もやっていないのに、有罪判決がでる。そこから考えると、「本人が居ない場所で、本人にとって悪いことが言われている」状況が目に浮かびますね。「あいつなんか気に食わねえから無視しようぜ(有罪判決)」

分かりやすい事例として、約8年前に当時の民主党が「大反省会」と題した会を開いたのですが、ここに居ない小沢一郎氏を菅直人元総理大臣が「これほど酷いとは思わなかった」とニタニタ笑いながら発言をしています。

これこそ欠席裁判ですね。この菅直人さんは今の立憲民主党の最高顧問、隣の枝野さんは立憲民主党の代表、その隣の長妻さんは立憲民主党の副代表となっているわけです。欠席裁判をやるような人たち、国民が「欠席している」場では一体どんな会話をしているのでしょうか。

それはさておき。そんなことをやっているから、パーティーに参加している人も「自分がここでパーティーを抜けると、抜けた後に悪口とか言われたりハブられたりするんじゃないか」と疑心暗鬼になり、誰もパーティーを終わらせようとしない。だから永遠に終わらない。こんなパーティー、チキンレースでしかない。悪口言いまくって他人を貶しているような奴らも、所詮自分が悪く言われるのが怖いただのチキン(臆病者)。

疑心暗鬼になって誰も信じられない世界なんて居心地が悪いし、疲れる。信じようよ、信じられようよ、信じあう世界にしないと、世界は終わる。と欠席裁判を傍聴している主人公は言います。

2番サビ後は冒頭と同じ歌詞ですが、最後の1フレーズだけ変わっています。この曲の冒頭では「なぜだか心は血を流していた」のに、ここでは「痛みは感じなかった」というフレーズに。

いくつか解釈はできると思います。1つ目が、悪く言われすぎて痛みを感じないほどに病んでしまった。2つ目は、ここで主人公が何か決心をして、流れ弾を受けても痛みを感じないほど屈強になった。僕は恐らく後者だと思っています。

悪口を言い合っている人たちをチキン(臆病者)と呼び、「信じあおうよ」と呼びかけているわけですから。

言いたいこと言わせてくれ

Wait a sec.
言いたいこと 言わせてくれ イェー!

出典:櫻坂46『流れ弾』
作詞:秋元康 作曲:デレク・ターナー

この楽曲で一番重要な部分だと思います。MVでもこの歌詞から雰囲気がガラッと変わります。この歌詞より前の部分では全身黒色の衣装で暗い表情が多かったのに、ここから全身紅色の衣装で、感情を爆発させて踊り狂っています。

その他大勢の人、リンチパーティーを楽しんでいる人たちに対して「wait a sec(ちょっと待って)」と呼びかけ、「言いたいこと言わせてくれ」と歌う。

自分のことだけを語りあう平和な世界

ある日ある場所で敵対するチーム 呼ばれたパーティー (呼ばれたパーティー)
たった一つだけのルールを決めて・・・ 『他人のことは言わない』
誰も彼も自分のことだけ語り合った (語り合った)
そうか みんな本当は誰かに話しかけたかっただけなのか? イェーーイ!

今宵もどっかしらで顔隠してリンチパーティー(リンチパーティー)
ターゲットにはなりませんように・・・ いい子でいますから ねえ
こんなことしてたら誰も彼も家から出ない(家から出ない)
語り合おう 見つめ合おう 愛がなくちゃ 世界は終わる イェーーイ!

出典:櫻坂46『流れ弾』
作詞:秋元康 作曲:デレク・ターナー

ある日ある場所で主人公はパーティーに参加します。それは敵対していたチームに呼ばれたもの。しかし、そのパーティーはこれまでのパーティーとは違い、「他人のことは言わない」というたった1つだけのルールを決めたパーティ。

そのルールを守って参加者は皆、他人のことを言わずに自分のことだけを語り合った。決めたのはたった1つルールなのに、これほど平和なパーティになるとは。このパーティーに参加した主人公はあることに気が付く。「そうか、みんな他人のことを貶めたり、悪く言ったりしているけど、本当は誰かに話しかけたかっただけなのか」と。

無意識なのか、自分をよく見せるためかは分かりませんが、本当は自分のことを誰かに話しかけたかっただけだった。だから「他人のことは言わない」と決めれば、みんな思い思いに自分のことだけを語り合い、他人のことは何も言わなくなった。

そして、1番のサビが再度歌われます。なぜここで1番の歌詞なのか。

楽曲の冒頭では流れ弾を受けて心が血を流しており、1番では街を歩いていただけなのに、銃口を向けられ炎上、「誰がなんのためにやってるの?わかんない」と困惑、傷心している様子が取れます。2番からは「自分守るために放火魔になるのか」、「チキンレース」とリンチパーティーに参加していた奴らに対して抗う様子も見てとれます。そして、「wait a sec」の後は、誰も自分のことだけを語り合う平和なパーティと出会う。

1番サビの「リンチパーティー」と「平和なパーティー」を対比させ「『リンチパーティー』より『平和なパーティー』がいいよね?ビクビクして家から出られないなんてバッカみたい!」と皮肉の意を込めて1番のサビをもってきているのだと思います。2番サビをもってくると、主人公がすでに強くなって「欠席裁判はチキンレースだ」とディスっているので、平和なパーティーとの対比に使うには不向きだったのではないでしょうか。

銃声が聞こえない、平和な世界に

飛んで来なくなった流れ弾 窓の外なんか見ちゃいない
週末の夜の街にも 銃声は聴こえない

出典:櫻坂46『流れ弾』
作詞:秋元康 作曲:デレク・ターナー

その対比の結果、皆「リンチパーティなんかより平和なパーティがいいよね」となり、リンチパーティは行われなくなり、平和なパーティのみが開かれる平和な世界になりました。

仕事もなく、夜更かししがちな週末の夜の街にも銃声は聞こえず、みんながみんな自分のことだけを語り合う平和な世界になりましたとさ。

まあ世の中そんな単純なことではないし、理想論ではありますけど、いつかこんな世界が現実にも訪れるといいですね。

櫻坂46「流れ弾」の歌詞を考察。現代社会を痛快に風刺。