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「大人」になりたくない人の雑記

飛行機内へのペット同伴問題、緊急時はどうなる?

1月2日、羽田空港で悲劇が起こりました。海上保安庁の飛行機と、JALの飛行機が滑走路上で衝突。この事故によって海上保安庁の飛行機に搭乗していた5名が死亡、JALの旅客機側では負傷者こそ出たものの、死者は出なかったことから、一部では「奇跡」と呼ばれています。

しかし、この奇跡の裏側に悲劇がありました。JALの旅客機側で死者は出なかったとありましたが、実は貨物室内にペットが2匹おり、この2匹のペットは残念ながら救助されませんでした。

これを機に一部の有名人が「客室へのペット持ち込みを検討できないか」と発言し、プチ炎上してしまいました。

日本でも客室内にペットを持ち込むことが許可されている航空会社はありますので、それをもとに改めて考えていきたいと思います。

大前提として、日本においてペットは「モノ」扱い

まず大前提として、日本の法律ではペットなどの動物は「モノ」として扱われています。

昨年の9月、名古屋で女子小学生が愛犬と散歩で横断歩道を渡っていた際、車が突っ込んできて、愛犬が撥ねられ亡くなってしまったという事故がありました。
参考:法律上は『モノ』扱い…6歳女の子と散歩中だった愛犬が車にはねられ死亡 ペット被害の事故に“厳しい現実” | 東海テレビNEWS

被害者が人間であれば、過失運転致死罪などに問われる可能性があります。しかし、上記の事故では参考サイトにもあるように、「報告義務違反」や「信号無視」などの「道路交通法違反」に問われる可能性があります。

動物愛護法はあくまでも故意犯が対象

また、動物愛護法といった動物を守る法律もあります。

しかし動物愛護法の基本原則には以下のようなことが記されています。

(基本原則)
第二条 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。

出典:動物の愛護及び管理に関する法律 | e-Gov法令検索

「みだりに」とあるように、あくまでも「動物を殺してやる」という意思を持って、故意に動物を殺したり傷つけたりしない限りは、動物愛護法違反とはならない可能性が高いとのことです。
参考:法律上は『モノ』扱い…6歳女の子と散歩中だった愛犬が車にはねられ死亡 ペット被害の事故に“厳しい現実” | 東海テレビNEWS
そのため、上記の名古屋で起こった交通事故は、運転手が「わざと犬をひいた」ということでなければ、動物愛護法違反となる可能性は低いとのことです。
また、羽田空港で起こった事故によってペットが亡くなられた事例についても、ペットを故意に殺したわけではないので、こちらも動物愛護法違反となる可能性は低いと思います。

飛行機客室へのペット持ち込みはなぜできないか

航空会社のサイトを確認したところ、機内への持ち込みをお断りしている理由は記載されていませんが、機内へ持ち込みが可能な動物は以下のような記載がありました。

機内持ち込みの条件
小型の容器(幅20cm×高さ20cm×奥行30cm以内)に入れられていること
外に逃げ出したり、水漏れがない状態にすること
他のお客さまのご迷惑になる特性(鳴き声・毒性・匂い)がないこと
他のお客さまの配慮として容器の中が見えないように梱包していただくこと
産業用、商業用ではない

出典:JAL | 国内線 ペットとおでかけサービス(ご搭乗サポート)

これを逆説的に考えると、「ペットは場所を取る」「逃げ出したり水漏れの可能性がある」「鳴き声や毒性・匂いがある」ということが、機内への持ち込みが不可能な理由となりそうです。

犬や猫アレルギーを持つ方が居たり、飛行機という慣れない環境で動物がずっと吠え続けたりしていたら、たしかに迷惑ですものね。あとはおしっこの匂いなども嫌いな人が居ますし。

国際線にもなれば飛行機の中で一泊することもありますし、国内線でも機内で仮眠をとる人も居ますからね。

貨物室内でも温度や湿度などを管理することで、客室と同じ環境にしています。決して航空会社も動物をモノ扱いしているわけではなく、多くの人が快適に利用できる環境をつくるために、このような縛りを設けているのだと思われます。

機内へ持ち込み可能な旅行会社も

国内の航空会社のほとんどは機内への持ち込みをお断りしています。しかし、僕も知らなかったのですが、機内へ持ち込み可能な会社も存在します。

スターフライヤーの「FLY WITH PET!」という取り組みでは、これまで一部の便が対象でしたが、2024年1月15日から国内線全便が対象になりました。
参考:FLY WITH PET! | 搭乗手続きについて | スターフライヤー

スターフライヤーは対策として、持ち込むペットが飼いならされて十分にトレーニングされていることを条件としています。また、ケージにシールロックを装着し脱走を防止し、ニオイ対策としてオムツの着用を求めています。さらに座席は最後列の窓際のみとし、座席にはカバーを装着、重点的に清掃を行うことで、次に座る人も安心して利用できるようにしています。

前項であげた持ち込み不可の理由をすべてクリアしていることで、他の人間も飼い主も安心して飛行機を利用できるようになっていて、これは良い取り組みだと思います。

しかし緊急時はモノ扱いのまま

スターフライヤーのように、機内への持ち込みが可能だとしても、羽田空港でおきた事故のような場合はモノ扱いとなってしまいます。

スターフライヤーの同意書を確認すると、以下のような項目があります。

緊急時の酸素サービスはペットにはご利用頂けません。また、脱出の際にはペットは機内に置いて行かなくてはなりません。

In case of emergency, oxygen service will not be available for pets. In addition, pets must be left on board when evacuating.

出典:同意書兼申込書(PDF)

緊急時に酸素マスクが落下し着用する場合がありますが、ペットにはそれができないのと、羽田空港事故のように、脱出が必要になった際、ペットは機内に置いていかなければなりません。

ペット同伴可能になったとしても、緊急時には機内に置いていくことになるので、最悪の場合は羽田空港事故のように亡くなってしまう可能性があります。

なぜ置いていかなければならないかというと、ペットは手荷物扱いとなり、脱出時は手荷物を持ってはならないことが、国交省の指針によって決まっているためです。

国交省だけでなく米国連邦航空局でも「ペット=手荷物」扱いとなり、「すべての手荷物規則に従う必要がある」としていることから、緊急時は機内に置いていかなければなりません
参考:ペット「機内持ち込み」できても解決しない? 認める航空会社あるが...脱出時「救えない」可能性高い理由: J-CAST ニュース【全文表示】

ペット同伴と緊急時の扱いは個別に考えなくてはならない

以上のことから、ペット同伴と緊急時の扱いは、個別に考えなくてはならないと思います。

フリーアナウンサーの方がSNSで「海外の航空会社で可能ならば日本でも客室へのペットの持ち込みを検討できないか」と投稿したのに対し、別の有名人の方が「災害時、非常時にはモノとしてではなく家族として最善を尽くす権利を…。生きている命をモノとして扱うことが私にはどうしても解せないのです」と返信したことで、別々の問題を一緒くたにしていることで、プチ炎上したのかと思います。

前項までの内容でもわかる通り、ペットを持ち込みを許可しても、非常時にはモノ扱いとなるわけで、ペットが助かるとは限りません。

ペットの持ち込みに関してはスターフライヤーの取り組みがほぼ最適解なのかなと個人的には思います。そのため、この取り組みを他社にも広げるなり、他にもっと良い方法があればそれを採用すれば良いと思います。

緊急時の動物の扱いは航空会社の一存では変えられない

しかし、緊急時の取り扱いは国交省の指針が関わってくるので、航空会社のみの取り組みではどうしようもないというのが現実です。

そのため、まずは国交省の指針を変える必要があります。また変えるとしたら、どのように変えるのかを、「ペットも非常時には脱出させるべきだ」と考える方は提案すべきです。

どうすればペットとともに脱出できるか

そもそも、なぜ脱出時に手荷物を持ってはいけないか。手荷物を取り出したりして、狭い通路が渋滞し脱出が遅れることが1つ。他に、脱出用のシューター(すべり台のようなもの)が、手荷物によって破損する可能性があるためです。

それを考慮すると、脱出時に手荷物を持つことを許可するのは現実的とは言えません。

ではどうすれば良いかなのですが、以下はあくまでも僕個人の考えです。

まず前提として人間の赤ちゃんのように抱っこして避難というのは好ましくないと思います。パニックになってするりと腕を抜け出して、走り回ったりしたら大変ですし、脱出シューターに爪などが引っかかって破損したら、他の人が脱出できなくなってしまいます。

また、ケージに入れたままというのも、「それじゃあ他の手荷物と変わらないじゃないか!」、「ケージより小さいパソコンはダメでなぜケージは良いんだ」となりかねません。

他の人も仕事をしている方であれば、重要なデータの入ったパソコンだったり、子どもであれば大事にしているおもちゃなどもあるかもしれません。それらはダメでケージはオッケーとなると…不公平ですよね。

そもそも脱出時にケージを抱えたまま滑り降りる事ができるかと問われると、小さなものならまだしも犬や猫のケージは無理があるかと思います。

そうなると、抱っこひものようなものでしっかりと飼い主と固定して、脱出するというのが現実的なのかなと思います。

1分1秒を争う中で抱っこ紐を身につける時間があるかと問われると、それは検討の必要がありますが、マジックテープなどを使って時短の工夫をすればいいのかな…と素人的には思います。

僕はペットは飼っていないのですが、ペットや家族同然のラスカルが居るので、「ペットと一緒に旅行したい、飛行機に乗りたい」という気持ちは分かります。

ただ、そのためには段階を踏んでしっかりと議論を行ってルールを変える必要があると思います。感情的にならず、冷静にね。

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