昨年僕が更新休止中の2023年10月18日にリリースされ、遅くなってしまいましたが、櫻坂46『承認欲求』の考察をします。
イントロが強くて、アニラで生でパフォーマンスを見た時は、もうゾクゾクして鳥肌が立ちまくっていました。かっこよかったし、ライブでは盛り上がること間違いなしの一曲です。
櫻坂46『承認欲求』ミュージックビデオ
櫻坂46『承認欲求』歌詞考察
聖徳太子か!
街中 溢れるデジタルサイネージ
Oh Oh Oh Oh It’s so annoying
そんな一斉にメッセージされたって・・・
Oh Oh Oh Oh 聖徳太子か!出典:櫻坂46『承認欲求』
作詞:秋元康 作曲:浦島健太,加藤優希 編曲:加藤優希
渋谷や新宿といった街を歩いていると、建物に巨大なモニターが設置されていることがありますよね。渋谷のスクランブル交差点や新宿のヤマダ電機の建物が有名ですが。
それをこの曲の主人公は「It's so annoying」、迷惑だと思っているようです。それも、「so」とついているので、とても迷惑だと笑。
そして、「そんな一斉にメッセージされたって・・・聖徳太子か!」とツッコミを入れていますね。
聖徳太子はみなさんご存じの通り、10人以上の話すことを同時に聞き分けることができるという伝説があります。主人公は一斉にメッセージされて、同時に音声を聞いていることから「自分は聖徳太子か!」と怒ります。怒るというか、半分呆れですかね。「あぁ!もうヤダ!」的な感じだと思います。
関係ないですが、リリース当初まとめサイトで聖徳太子の英訳が「multi-task listner」なのが話題になってましたね。うまいけど、伝わるのかな・・・?
一人一人に構ってられない
世界はいつも 騒々しい
好き勝手 叫び続けてる
(私が・僕が・俺が ジャン ジャン)
言いたいことはあるんだろうが
一人一人に構ってられない
(あなたが・君が・おまえが ジャン ジャン)出典:櫻坂46『承認欲求』
作詞:秋元康 作曲:浦島健太,加藤優希 編曲:加藤優希
渋谷や新宿などのデジタルサイネージが溢れている街はもちろん、現代の世界全体がいつも騒々しいいんですよね。よく「情報過多社会」と言われていますが、インターネットやSNSの普及によって、一人ひとりが情報を発信できる=「好き勝手叫び続ける」ことができるために、常に情報が飛び交い情報が溢れています。
その結果「私が・僕が・俺が」と一人一人に言いたいことはあるんでしょうけど、数が多すぎる(騒々しい)ことで、「あなた・君・お前」一人ひとりに構っていられない。
不安!不安!不安!不安!
Hey! 心の中で手を振ってる
ここにいること わかっているか 不安!不安!不安!不安!出典:櫻坂46『承認欲求』
作詞:秋元康 作曲:浦島健太,加藤優希 編曲:加藤優希
これはデジタルサイネージの中の人、SNSのユーザーのことを言っているのでしょうね。
ポストや画面の中ではきらびやかに、不安なんてないように見せているけど、心の中では「私のこと見てる?」「埋もれてない?」と不安でたまらずに手を振っている。
結局こういう人が行き過ぎると、過激派YouTuberとか、炎上商法にハマっていって、滅んでいくんだろうなあ・・・。
自分に自信がないのか?
誰も承認欲求強すぎて
そんなにも自分に自信がないのかい?
もっと見てと求められるSNS
ちゃんと見てるからって言ってるのに欲張る
Approval話聞いてよ もっと頷いて
具体的に褒めて欲しい
他人とは違う 何かって何?
君は君でしかないだろう出典:櫻坂46『承認欲求』
作詞:秋元康 作曲:浦島健太,加藤優希 編曲:加藤優希
1番で「私が・僕が・俺が」と好き勝手叫び続け、心の中で不安に思って手を振っている人たちを見て、主人公が思います。「誰も承認欲求強すぎて そんなにも自分に自信がないのか?」と。
主人公は「ちゃんと見てるから」と言っています。それなのに「もっと見てもっと見て!」と求められるのがSNS。それを見て「欲張る Approval」、承認を欲張っている。
「話聞いてよ!」「もっと頷いて!」「具体的に褒めて!」と、徐々にエスカレートしていくのが、本当に欲張っている感じが伝わってきますね。「よ」「て」で音程が上がるのも相まって。
なんか、面倒な人と付き合っているイメージですね。段々束縛が強くなっていくようなの。で、別れるっていうとヒステリックに暴れだす人。居ますよね、こういう人。僕の付き合ってきた人にも、こんな人が居ました。もう絶交してますけど。
そういう人たちって「自分は他の人とは違う」「他人とは違う何かを持っている」と、自分は特別な人アピールをしますけど、主人公は「他人とは違う何かって何?」「君は君でしかないだろう」と言います。
十人十色、SMAPの『世界に一つだけの花』に「元々特別なオンリーワン」という歌詞もありますが、人は元々他人とは違うもの。君は君でしかないんですから。「え、何を言っているの?」と主人公は思っているわけですね。
自分という特別な存在にいつになったら気づいてくれる?
自分という特別な存在に
いつになったら気づいてくれる?
ねえ 何で無視するの?
目には映ってるYou know?
お互いに同じこと
勘違い ムカついてた出典:櫻坂46『承認欲求』
作詞:秋元康 作曲:浦島健太,加藤優希 編曲:加藤優希
「人はもともと一人一人違うでしょ?」と言われても、SNSユーザーは「自分という特別な存在にいつになったら気づいてくれる?」「ねえ何で無視するの?」「目には映ってるでしょ?」とエスカレートが止まりません。
1番のサビでは「話聞いてよ」「もっと頷いて」「具体的に褒めて」といわば、お願いをしていたのに対し、ここでは「いつになったら気づいてくれるの?」「何で無視するの?」「目には映ってるでしょ?」と、まるで「私は悪くない」「お前が悪い」と言っているよう。そしてこれを言った相手(SNSユーザー)も同じこと思っていたんですね。
しかし主人公は「ちゃんと見てるよ」と言っています。SNSユーザー同士、勝手に勘違いしてムカついているだけなんですね。これ僕が主人公の立場だったら笑ってただろうな。
メンタルが崩壊しそう・・・
集団的にずっと孤独
メンタルが崩壊しそうで・・・
(黙る・籠る・沼る ジャン ジャン)
こんな頑張って生きているのに
誰もわかってくれない四面楚歌
(頼る・逃げる・追えない ジャン ジャン)出典:櫻坂46『承認欲求』
作詞:秋元康 作曲:浦島健太,加藤優希 編曲:加藤優希
そんな喧嘩をしているうちに周りからはどんどん人が離れ、SNSという多くのユーザーが居る集団の中にいるにもかかわらず孤独になり、メンタルが崩壊しそうになり、「黙る・籠る・沼る」。自業自得ですが。
「こんな頑張って生きているのに 誰も分かってくれない四面楚歌」。勝手に誤解して、「気づかないお前たちが悪い!」なんて思っていれば、周りからはどんどん人が離れる。それどころか四面楚歌、敵に囲まれてしまい、頼ることも逃げることも、追うこともできず、どんどん沼っていきます。
知らん!知らん!知らん!知らん!
Hey! コミュニケーション能力なんて
全くなくて どうすればいい? 知らん 知らん 知らん 知らん出典:櫻坂46『承認欲求』
作詞:秋元康 作曲:浦島健太,加藤優希 編曲:加藤優希
そして、四面楚歌、周りが敵だらけになったSNSユーザーは、主人公に「コミュニケーション能力なんて全くなくてどうすればいい?」と聞きます。主人公はそんなSNSユーザーに「知らん」と連呼。
コミュニケーション能力以前に、その強すぎる承認欲求で、周囲に敵をつくることをやめるべきでしょうに。そして2番のサビに続きます。
それは被害妄想というものだ
それは被害妄想というものだ
君のことだってちゃんと見ているよ
仮に誰かに承認されたら即 友達かい?
キリがなくなるぞって次から次に止まらない
涙出典:櫻坂46『承認欲求』
作詞:秋元康 作曲:浦島健太,加藤優希 編曲:加藤優希
そんな救いようのないSNSユーザーにも、主人公は優しい言葉をかけます。「それは被害妄想だよ」「君のことだってちゃんと見てるよ」と。優しいですねぇ。僕だったらもう絶交してますよ。
そして、「仮に承認されたら即友達になるの?」。いいねや、フォローされて「承認」されてすぐ友達になるの?それって本当の友達なの?
1番サビでもありましたが、承認されても結局は欲張って「もっと話聞いて!」「頷いて!」「褒めて!」「何で気づかないの?」・・・とキリがなくなり、またメンタルが崩壊して「黙る籠る・沼る」で次から次に涙が出て止まらなくなるよ。と忠告してあげてるんですね。
アンチもブロックしないよ 数だけほしいフォロワー
アンチもブロックしないよ
数だけ欲しいフォロワー(Why?)
誹謗中傷 想定内
傷だらけのまるでホラー誰でもいいから
愛を 愛を出典:櫻坂46『承認欲求』
作詞:秋元康 作曲:浦島健太,加藤優希 編曲:加藤優希
そんな主人公の優しい気持ちをも無視し、SNSユーザーは「アンチもブロックしないよ」「数だけ欲しいフォロワー」と言います。主人公も「Why(何で?)」と疑問に思います。
恐らくですが、SNSユーザーはフォロワーの数を「承認された数=自分を見てくれている人」と認識しているため、数が多ければ多いほど「認められた」「気づいてくれた」嬉しく思うのでしょうね。アンチがフォローしていれば、ブロックすることでフォロワーも減るので、数を減らしたくないSNSユーザーはアンチもブロックせずにいるのでしょう。
そして、「誹謗中傷 想定内」と強がっているのかは分かりませんが、主人公から見れば誹謗中傷に傷つき「まるでホラー」。
そして懲りずにSNSユーザーは「誰でもいいから愛を 愛を」と。
「誰でもいいから」というのは上述のアンチでもよいということでしょう。「愛」というのは、SNSユーザーにとっては「自分を見てくれている人、認めてくれている人=承認=フォロワー」。傷だらけのまるでホラーのような状況になっても、まだ「愛を!愛を!」と言っています。
もう末期ですね。まるで脱法ドラッグに手を出してボロボロになっているのに、もっとクスリを!と言っている薬物中毒者のよう。
君は君でしかないだろう
誰も承認欲求強すぎて
そんなにも自分に自信がないのかい?
もっと見てと求められるSNS
ちゃんと見てるからって言ってるのに欲張る
Approval話聞いてよ もっと頷いて
具体的に褒めて欲しい
他人とは違う 何かって何?
君は君でしかないだろう出典:櫻坂46『承認欲求』
作詞:秋元康 作曲:浦島健太,加藤優希 編曲:加藤優希
そんな薬物中毒者と化したSNSユーザーはもう救いようがないですが、ラスサビには1番のサビが持ってこられています。
「君は君でしかないだろう」という歌詞を最後に持ってくることで、「こんな人たちにはなるな」「十人十色、人は元々特別なオンリーワン」だということを伝えて楽曲は終わります。
まとめ
情報過多社会、承認欲求におぼれ過激なことを行うような人が増えた現代に最適な楽曲だと思います。
「まるで薬物中毒者のよう」と表現しましたが、実際世界的にもそのような動きがあるらしく、ニューヨークではSNSが「公衆衛生上の危険」に指定されたという報道もあります。
参考:ニューヨーク市がSNSを「公衆衛生上の危険」に指定…「子どもの精神を危険にさらす」 : 読売新聞
イギリスでも16歳未満のSNS利用禁止を検討かと報道されるなど、世界的に規制すべきではないかという流れが出てきているのも確かです。
参考:イギリス政府 16歳未満のSNS利用禁止を検討か
また、僕のところにもつい最近、海外のマーケティング会社を名乗るところから「もっといいねやフォロワー数を増やしませんか?」とメールが届きました。
『承認欲求』の歌詞にもありましたが、「承認されたら即友達か?」「カネで買ったいいねやフォロワーは本当のフォロワーなのか?」と思い、即断りましたけど、承認欲求に飢えている人はこういうところにもお金を出して「もっと!もっと!」と欲張ってカネも無くなっていくんでしょうね・・・。
そう考えると、『承認欲求』という楽曲はリアルですし、ますますSNSは薬物のようなのだなと実感しました。
「君は君でしかない」というメッセージ、恐れ多いですがSMAPの『世界に一つだけの花』の「元々特別なオンリーワン」と並ぶ、名フレーズだと思います。個人的に。