たきぶろぐ

「大人」になりたくない人の雑記

欅坂46「サイレントマジョリティー」を考察。

7年前の今日、伝説のアイドルグループがデビューしました。伝説というのは過剰かもしれませんが、僕にとっては伝説でした。デビュー当時の様子を僕は知りませんが、姉の友人から借りたアルバムを再生した瞬間の鳥肌が立つほどの衝撃は忘れられません。

欅坂46「サイレントマジョリティー」を考察します。

欅坂46「サイレントマジョリティー」考察 たきぶろぐ

欅坂46「サイレントマジョリティー」MV

「サイレントマジョリティー」のミュージックビデオは、当時建設中の渋谷ストリームの工事現場で行われています。笑わないアイドル、クールなアイドルといったこれまでのアイドルとは一線を画した欅坂46はすべてこの「サイレントマジョリティー」から始まっています。ぜひご覧ください。

「サイレントマジョリティー」歌詞考察

似たような服を着て、似たような表情でどこへ行く?

人が溢れた交差点をどこへ行く?(押し流され)
似たような服を着て 似たような表情で...

群れの中に紛れるように歩いてる(疑わずに)
誰かと違うことに何をためらうのだろう

出典:欅坂46『サイレントマジョリティー』
作詞:秋元康 作曲:バグベア

「サイレントマジョリティー」のMVは渋谷の工事現場で撮影されています。渋谷で踊る彼女たちは渋谷の街を見てこう思ったのでしょう。「人が溢れた交差点を押し流されどこへ行く?似たような服を着て、似たような表情で」。

「似たような服」、「似たような表情」とあることから、私服を着て友人などと会話しながら楽しそうな様子ではなく、スーツを着て「これから仕事か...」と少し憂鬱な表情を浮かべながら交差点を渡っている、平日の朝の様子であろうことがわかります。

そのような人たちを見て、彼女たちは「群れの中を疑わずに紛れるように歩いてる」と歌います。先ほどの「押し流され」という歌詞、「疑わずに」という歌詞、「紛れるように」という歌詞から、自分の意志を持たず、周りの人に流される人のように彼女たちは思ったのでしょう。

そしてそのような人たちを見て「誰かと違うことに何をためらうのだろう」と疑問に思います。

その目は「死んでいる」

先行く人が振り返り
列を乱すなと
ルールを説くけど
その目は死んでいる

出典:欅坂46『サイレントマジョリティー』
作詞:秋元康 作曲:バグベア

先を行く人と聞くと、一見率いている、リーダーシップのある人のように思いますが、その人も目が死んでいる。なぜその目は死んでいるのか、推測にしかすぎませんが「列を乱すな」とルールを説いているが、そのルールも結局は上の人間がつくったもので、自分の意志ではない。上から言われて仕方なくやっているだけで、自分の意志ではないから目が死んでいるのではないか、と思います。

もっと言うと、先行く人はルールを説いているがそのルールに疑問や不満を抱いているものの、処罰を恐れて上に反抗することができず、上に支配されているのではないか、とも思います。

大人たちに支配されるな

君は君らしく生きて行く自由があるんだ
大人たちに支配されるな
初めからそうあきらめてしまったら
僕らは何のために生まれたのか?

夢を見ることは時には孤独にもなるよ
誰もいない道を進むんだ
この世界は群れていても始まらない
Yesでいいのか?
サイレントマジョリティー

出典:欅坂46『サイレントマジョリティー』
作詞:秋元康 作曲:バグベア

主人公の「僕」の横には同じように平日朝の渋谷の街並みを見ている「君」が居たのでしょうか。僕は君に「君は君らしく生きて行く自由があるんだ」、「大人たちに支配されるな」「はじめから諦めてしまったら僕らは何のために生まれたの?」と語りかけます。

その歌詞から「君」という人物は、今の「僕ら」が見ている群れの一人だったのでしょう。でも環境になじめなかったのか、主人公のように周囲の人間に疑問を抱いたのか、理由は分かりませんが、似たような服を着て似たような表情で歩く人々の群れから抜け出そうと思っているのでしょう。でもちょっと躊躇している。

そんな躊躇している「君」に対し、「夢を見ることは時には孤独にもなるよ、誰もいない道を進むんだから」、「この世界は群れていても始まらない。Yesでいいの?」と言います。

「夢を見ることは時には孤独にもなるよ 誰もいない道を進むんだ」。いい歌詞ですよね。一人ひとり夢は違うのだから、だれかと同じ道を歩くなんてことは無い。その道には自分一人しか居ない。だから孤独になるのは当然のこと。

群れていたって自分の夢が叶うわけでもない。このまま自分の意志を持たず周囲の人間に流されるだけでいいの?表に出さないだけで心の中でそう思っている人は多いはず。ここでこの曲のタイトル、「サイレントマジョリティー」。そのような人たちのことを「沈黙する多数」と表現しています。

「声を上げない者たちは賛成している」

どこかの国の大統領が言っていた(曲解して)
声を上げない者たちは賛成していると...

選べることが大事なんだ 人に任せるな
行動しなければ Noと伝わらない

出典:欅坂46『サイレントマジョリティー』
作詞:秋元康 作曲:バグベア

どこかの国の大統領が「声を上げないものたちは賛成している」と曲解している。政治的な話にはなりますが、日本の選挙でも投票率の低さは問題視されています。ただ、その人たちがみな今の政府のやることに賛成しているのかというとそういうわけではない。人それぞれ理由はあるでしょうが、そもそも政治に興味がない、どこに投票したらいいかわからない、どこに投票しても変わらない、といった理由も挙げられます。だから声を上げない人たち全員が全員賛成しているわけではないと思います。

ただ一部にはこうやって声を上げない者たちは賛成していると曲解して好き放題やる人もいます。だから「選べることが大事なんだ」、「人に任せるな」、「行動しなければNoと伝わらない」と歌います。

政治に限らず、何でもかんでも人に任せたり、周囲の人に同調したり、自分の意見を押し殺して仕方なくやっているなんてこともありますよね。でも嫌なら嫌だと言え、他人事だと思うな、自分事だと思えと彼女たちは歌います。

「未来は君たちのためにある」

君は君らしくやりたいことをやるだけさ
One of themに成り下がるな
ここにいる人の数だけ道はある
自分の夢の方に歩けばいい

見栄やプライドの鎖に繋がれたような
つまらない大人は置いて行け
さあ未来は君たちのためにある
No!と言いなよ!
サイレントマジョリティー

出典:欅坂46『サイレントマジョリティー』
作詞:秋元康 作曲:バグベア

「君は君らしくやりたいことをやるだけさ」と僕は君に言います。「君は群れから抜け出そうと思っているんでしょ?何をためらっているの?君は君らしく、やりたいことをやるだけさ」という意味でしょうか。One of themは直訳すると「その中の一人」。「群れの中の一人に成り下がるな」というメッセージですね。

一番のサビの部分でも書きましたが、夢は一人一人違うのだから、道はここにいる人の数だけある。一本の道じゃないんだ。自分の夢(道)の方に向かって歩けばいいんだ、と歌っています。

「見栄やプライドの鎖に繋がれたようなつまらない大人」というのは、そのままの意味。「そんなつまらない大人たちに支配される必要はないんだよ」、「未来はつまらない大人たちのプライドや見栄を守るためにあるわけじゃない、君たちのためにあるんだ」、「そんなつまらない大人たちは置いていけ、No!と言いなよ」と、サイレントマジョリティーに訴えかけます。

誰かの後ついて行けば傷つかないけど

誰かの後ついて行けば
傷つかないけど
その群れが総意だと
ひとまとめにされる

出典:欅坂46『サイレントマジョリティー』
作詞:秋元康 作曲:バグベア

たしかに誰かの後をついて行けば傷つくことは無い。周囲の人に合わせれば悪目立ちをすることもないし、誰かに指をさされることもない。でもその群れが総意だとひとまとめにされてしまいます。

心の中では不満に思っていたり、嫌だと思っていても、その群れがYesと言っていればみんなYesなんだとひとまとめにされ、賛成していると曲解されてしまいます。

そこで一番サビの繰り返しになります。

「君は君らしく生きて行く自由がある」、「この世界は群れていても始まらない」「Yesでいいのか?サイレントマジョリティー」と歌い、この曲を締めます。

「サイレントマジョリティー」の抱えた矛盾

「サイレントマジョリティ」は多くの矛盾を抱えているといわれていますが、それらの矛盾に対する僕の考察を書いていこうと思います。

「群れていても始まらない」と言っているのに群れている

これが一番言われていると思います。「群れていても始まらない」と歌っている本人がグループという群れになっているじゃないか!という意見ですね。

この意見はぱっと見正論かのように思えますが、僕はそうは思わないです。ここで歌われているのは「サイレントマジョリティーのままでいいの?」ということであって、決して群れる=悪ということではないんですね。

群れの中に紛れて自分の意見を言わず、周囲の人間に押し流されている人たちに対して「群れていても始まらないぞ、No!と言いなよ!」と言っているのであって、群れるなと言っているわけではないんですね。なので周囲の人間と合うのであれば、群れることもいいと思います。

そして、彼女たちは「アイドルになりたい」という同じ夢を持った仲間たちなので、群れていてもこの曲と矛盾しているというわけではないのではないかと僕は思います。

もっと言えば、彼女たちはこの曲の主人公「僕」であって、「僕」は群れを抜け出して群れを抜け出すことをためらっている「君」を群れから出してあげる立場の人間。彼女たちは既に群れから抜け出しているので、この曲で言われている「群れ」ではないとも思います。

「大人たちに支配されるな」と言っているのに、大人たちがつくった曲を歌わされている

これは論外だと思います。彼女たちが嫌々「サイレントマジョリティー」を歌っていたらこの意見はごもっともだと思いますが、彼女たちがそう思っているかは僕らは分からないじゃないですか。

しかし、彼女たちのデビュー曲であって、欅坂46のラストライブで最後に歌われたこの曲を彼女たちが泣き叫びながら歌っている様子を見ていると、僕は嫌々歌わされているようには思えないですね。

僕の記憶になってしまい恐縮ですが、パフォーマンスで笑顔を封印するというのもメンバーたちがこの曲の歌詞や楽曲を聴いて決めたと聞いたことがあります。もしそれが本当だとすれば、彼女たちは一生懸命この楽曲と向き合って表現しようとしていたと思います。

なので「歌わされている」という言い方は彼女たちに失礼だなと思いますね。

「似たような服を着て」と言いながら、自分たちは全く同じ衣装を着ているじゃないか

これも繰り返しにはなりますが、彼女たちは群れを抜け出した人間であり、この曲は群れの中に紛れて自分の意見を言わず、周囲の人間に押し流されている人たちに対して「群れていても始まらないぞ、No!と言いなよ!」という曲であり、彼女たちは自分の意志でアイドルになり、この衣装を身に着けているのであるから、矛盾はしていないと思います。

もし彼女たちが嫌々この衣装を身に着けていたならこの意見にも納得できますが、彼女がどんな気持ちで衣装を身に着けていたかは彼女たちにしか分からないことなので、僕も矛盾していないとは言えないし、反対に矛盾しているとも言えないと思います。

「大人たちに支配されるな」と言いながら、本人たちは大人じゃないか!

これも「サイレントマジョリティー」の歌詞を見ればわかるのですが、大人というのは2番のサビにある見栄やプライドの鎖に繋がれたような大人のことであって、大人全体のことを言っているわけではないんですよね。

大人にも積極的に意見を聞いて取り入れてくれる人もいれば、自分の言うことが絶対に正しいんだ、お前の言うことは聞かない!というプライドを持った人も居る。前者の大人は人を支配しようとは思っていないでしょうね。ただ、後者の大人は自分の意見に周囲の人間を従わせようとしている。

サイレントマジョリティーで歌われているのは後者の大人のことであって、大人全体のことを批判しているわけではないし、さらに言えば、大人というのはあくまでも比喩表現であって、広い意味では「上の立場の人」のことを示すと僕は思っています。彼女たちにも上の立場の人は居るわけなので、矛盾はしていないと思います。


以上、欅坂46「サイレントマジョリティー」の考察でした。僕なりの考察なのでもちろん色んな意見はあるかと思いますが、「ここにいる人の数だけ道はある」ので(逃げ)。

僕も成人を迎えて社会人になって、今改めてこの曲を聴くと思うことはありますね。学生の時に聴くのと大人になって聴くのとではまた違うように思います。学生の時に出会えてよかったなと思います。

僕は残念ながらサイレントマジョリティーの一員になってしまっていますが、No!と言えるような人間になりたいものです。

また、統一地方選挙の投票日も近づいています。選べることが大事。少しでも現状に不満を持っているなら、ぜひともサイレントマジョリティーにならずNo!と声を上げましょう。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。