たきぶろぐ

「大人」になりたくない人の雑記

日本が独裁国家に?緊急事態条項とは何なのか

先週の土曜日、櫻坂46のミニライブアーカイブ配信を見ていたのですが、いやあ...良かったですね。「桜月」、「もしかしたら真実」の切ない表情であったり、「Cool」のクールな表情だったり、3期生の初々しさであったり、「無念」のまつりの声がめっちゃよかったり、魂のLiarのメンバー一人ひとりの表現だったり...最初から最後まで目が離せなかったですね。今回の優勝は個人的には「Cool」のえんぴかだったように思います。「無愛想な男でいよう」の部分のえんぴか、毎回見てもかっこいいなと思います。ツアーがますます楽しみになりました。

前置きが長くなりましたが、4月5日に行われた参議院憲法審査会において、自民党が緊急事態条項の創設を主張しました*1。緊急事態条項はその性質上賛否が大きく分かれますが、今日は緊急事態条項の是非を考えてみたいと思います。

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そもそも緊急事態条項って何?

緊急事態条項とは戦争や内乱、大災害や感染症などの大規模流行など、国民や国家の安全が脅かされる緊急事態の際に、内閣などの行政機関に強力な権限を与えることで、これらの事態に対応ができるようにする、というものです。

日本では新型コロナウイルスが流行した当初、感染拡大を防ぐために緊急事態要請を発令しましたが、これはあくまでも要請であって強制ではありませんでした。また、中国やオーストラリアなど、外国では都市封鎖や行動制限が行われていましたが、日本ではそれが行われませんでした。

それはなぜかというと、都市封鎖や行動制限の根拠となる法律がなかったためだったのだと思います。もっと言えば、そのような法律はつくることが難しかったのではないかと思います。

なぜなら、日本国憲法において基本的人権の尊重、経済活動の自由などが保障されているためです。国が都市封鎖や行動制限を行えば、これらが侵害されてしまうことになります。憲法は言わずもがな日本の最高法規であり、これに反する法律はつくることができないのです。

そこで出てくるのが、緊急事態条項です。緊急事態条項を創設すれば緊急事態は私権の制限が可能になると憲法に記されるわけなので、以上のようなことが可能になるわけです。ただ、人権が侵害されることになるため、そこに否定的な意見を持つ方が多いわけですね。

僕が緊急事態条項に賛成する理由

あらかじめお伝えしておきますが、僕は緊急事態条項の創設に賛成です。なぜならこのブログでも何度も触れていますが、現在の日本周辺ではロシアによるウクライナ侵攻、昨年末には北方領土にミサイルを配備しています。ほかにも北朝鮮による相次ぐミサイルの発射、先日は津波を人工的に起こすことができるとされる「核無人水中攻撃艇」の訓練を日本海で実施しています。中国は台湾周辺で台湾を包囲する形で軍事演習を行うなど、軍事的なリスクが高まっています

軍事的衝突のリスクだけではありません。首都直下型地震は30年以内に70%の確率で起こるといわれており*2、南海トラフ地震は20年以内に60%程度の確率で発生すると言われています*3。地震だけではありません。スーパー台風による被害や、日本ではなかなかありませんが、オーストラリアやアメリカでも発生した山火事など、自然災害のリスクも年々高まっています

日本が仮に戦争に巻き込まれる、外国から侵攻された場合、上述のように行動制限や強制移住などを行うことができません。なので国は「東京は核攻撃を受けるリスクがあるため、避難を要請します」というしかないんですね。緊急事態宣言のように。それで要請に応じる人ならいいのですが、「憲法違反だ!」とか言って要請に応じない人も居るのです。コロナの緊急事態宣言発令の時や、特措法の時もそういう人たちが居ましたね。しかし、国はやはり国民を守ることが第一ですしその義務があると思います。だから緊急事態条項を根拠とし、国民を攻撃リスクの高い地域から強制的に避難させることが可能となります。日本でも大戦中に集団疎開が行われましたが、これが緊急事態条項の創設によって可能となるわけです。

それに何よりも敵が攻めてきているのに、何かを決めるときにいちいち国会を召集してそこで賛否の投票を行って...とやっている暇はあるのでしょうか。そうしている間に民間人は次々と死んでいきます。そんなことをしている暇はないんです。一刻も早く適切な措置を講じる必要があります。だからこそ緊急事態宣言は必要だと思います。

そして、災害に関しても同様です。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、首都圏で帰宅困難者が発生し、駅構内や新宿などの大都市で多くの人が群れを形成していました。それの何が危険かというと、記憶にも新しいと思いますが、昨年のハロウィンシーズンに韓国で起こった梨泰院群衆事故。159名もの方が亡くなりました。日本でも過去に明石歩道橋事故がありましたね。緊急事態を宣言し、国がオフィスビルから出ないように命令をするなどが可能になれば、このような事故を未然に防ぐことができます。

緊急事態条項に反対する方々は、徴兵制が導入されるとか、戦争が起こった時に強制動員させられるとか、ナチスドイツのようなことになると意見しています。これに関しては後述しますが、悪用をすればそのリスクはあります。しかし緊急事態条項の大前提は上述のような、国民を守るためのものであると僕は思います。

悪用すればリスクがあるのは何にでも言えることです。例えば皆さんが普段使っているスマートフォンやインターネットも、離れている人と簡単につながることができるという良い点もあれば、使い方によっては誰かを死に追いやることもできる。これは法律も同じです。

しかし、その悪用を防ぐための抑止力であったり、憲法の条文をつくるなど、悪用のリスクを抑えるためにしっかりと議論をしていくことが大事です。その点、僕は緊急事態条項の制定には賛成していますが、自民党の改憲草案に関しては疑義がありますので、それを考えてみたいと思います。

自民党改憲草案 緊急事態条項への疑義

自民党 日本国憲法改正案

発動条件の「その他の法律で定める緊急事態」

自民党の改憲草案には発動条件について以下のように記載されています。

第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる

出典:日本国憲法改正草案 | 資料 | 自由民主党 憲法改正実現本部

発動条件に関して、自民党の改憲草案では第九十八条で触れられていますが、その中で「その他の法律で定める緊急事態において」と記載されています。これに関しては僕は反対です。理由は明白で、法律でなんでもやりたい放題になってしまう可能性があるためです。

極端ではありますが、例えば「選挙で政権与党が大敗をする可能性があるときに緊急事態を発動できる」という法律をつくってしまえば、与党が選挙で負けそうになったら緊急事態を発動して、国会議員の任期を延長、選挙の延期、内閣の独裁体制を長期的に行うことができるようになってしまいます。そうなれば事実上の独裁国家ですよね。

なので「その他の法律で定める緊急事態において」という文言は削除もしくは再検討すべきだと僕は思います。今の自民党が悪用しませんといったところで、将来に悪用する人が出る可能性は十分にありますし、それこそ敵国のスパイが日本の政界に入り込んで仮に政権を取ってしまえば、内側から国が崩壊していくことになりかねません。

なので憲法上では緊急事態の発動条件を「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害」と発動条件は絞るべきだと僕は思います。

「基本的人権は最大限尊重されなければならない」という曖昧な表現

自民党改憲草案の第九十九条3項には、以下のように記載されています。

3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。

出典:日本国憲法改正草案 | 資料 | 自由民主党 憲法改正実現本部

緊急事態条項をもとに緊急事態宣言が発令された場合、国民は国などの公の機関の指示に従わなければならないとあります。これに関しては緊急事態条項というものが元々そのようなものなので、問題はありません。

が、問題なのは後半の「基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。」という部分。性善説で考えれば人権は最大限に尊重されるから大丈夫、とも思えます。しかし、この最大限というのが実に曖昧な表現だと感じます。

人によって最大限って違うじゃないですか。例えばAとBという人がいて、Bは10kgの荷物を持つことができるけど、Aは5kgのものしか持てない。かといってAがサボっているかというとそうではなく、Aは持てる力を全部出しても5kgしかもない。Aにとっては5kgが最大限だけど、Bは10kgが最大限。

人によって最大限って違うので、この表現を憲法に入れるのは純粋に怖いなと思いますね。緊急事態条項の発動条件に内乱とありますが、時の政府が国会前でデモを行われたときに緊急事態宣言を発令し、緊急事態の収束のために指示に従わない者をその場で銃殺するなんてことも、可能になりうるということです。天安門事件のようにね。国民が問題だ、人権侵害だと言っても、政府が「いえいえ、我々は緊急事態の収束のために最大限、基本的人権を尊重しました」と言ってしまえば、憲法違反にはならない可能性があるということです。

これが緊急事態条項の創設に反対する方々の懸念だと思います。僕もこの「最大限」という曖昧な表現は削除すべきだと思います。

対案1 抵抗権の明記

1つ目の対案としては抵抗権を明記するのはどうでしょうか。抵抗権とはその名の通り、抵抗する権利です。政府などが不当に権力を行使し、国民の権利が侵害された場合に国民が抵抗することを保障するものです。ドイツやフランスにはこの抵抗権が記載されているようです*4

上述のような「その他の法律で定める緊急事態において」、「最大限尊重しなければならない」という曖昧な表現はすべて削除し、緊急事態宣言の発動条件を戦争・内乱・自然災害に限定し、抵抗権を明記することで、国民は緊急事態じゃないのに緊急事態宣言を発令した政府に対しては抵抗権を行使し、政府の指示に従わなくてもよくなります。

なぜ上記の表現を削除しなければならないかは、上記のように、ふざけた法律をつくっても「法律で定める緊急事態」と明記されていれば合憲になってしまうし、「最大限努力をしました」と言ってしまえば、合憲になってしまうためです。

自民党の改憲草案には抵抗権が明記されていないため、国が緊急事態宣言を発令した場合、国民は従うことしかできません。が、抵抗権を明記することで従わないという選択肢が増えるわけですね。もちろん従わないことによって生じた損害等は国は責任を負いません。国は国民を守るために緊急事態宣言を発令したのに、それに従わないという選択をしたのはご自身なわけですからね。そこはもちろん自己責任だと思います。

対案2 裁判所や国家による緊急事態宣言の強制終了を可能にする

対案の2つ目は、裁判所や国会によって緊急事態宣言を強制終了できるようにすることです。これもドイツやフランスの憲法にはあるようです*5

日本は司法(裁判所)、行政(内閣)、立法(国会)に権力が分散しています。三権分立と言われていますが、なぜ三権に分散しているかというと一つの機関に権力が集中し暴走を防ぐためです。であるならば、緊急事態宣言によって行政が暴走しないように監視するのが裁判所と国会の役目ですよね。

国民民主党の改憲草案は懸念に応えられている

国民民主党も自民党と同じように改憲草案を作成しています。

国民民主党 緊急事態条項の素案(PDF)

国民民主党の作成した緊急事態条項の素案は、上記のような疑義や懸念に応えられているように感じます。

また、国民民主党の上記の素案には青字で条文の解説や意図などが書かれているため、なぜこの条文にしたのかという意図も分かって、非常に勉強になります。ぜひ目を通してみてください。

国民民主党の提案する緊急事態宣言の発動条件

国民民主党の提案する緊急事態宣言の発令条件は以下の通りです。

第九十五条の二 内閣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害、感染症の大規模なまん延その他これに準ずる事態として法律の定める緊急事態において、国会による法律の制定その他の通常の統治機構の運用によつては当該緊急事態を収拾することが著しく困難であるときは、三十日以内の期間を定めて、緊急事態の宣言を発することができる。

出典:緊急事態条項の条文イメージ(たたき台素案) | 新・国民民主党 - つくろう、新しい答え。

自民党の改憲草案との相違点はいくつかありますが、まず違うのは感染症の大規模な蔓延も発動条件として明記している点ですね。次に懸念点の1つでもあった「その他法律で定める」という文言。国民民主党の素案にもこれは書かれているのですが、その前に「これに準ずる事態として」と明記することによって、懸念の部分でもあった選挙に負けそうになったら緊急事態宣言を発令できる、といった緊急事態宣言が濫用される可能性は低くなります。

また、「国会による法律の制定その他の通常の統治機構の運用によつては当該緊急事態を収拾することが著しく困難であるときは、」とあることから、まずは緊急事態宣言を発令しなくても対処できないかを考えて、それができない場合の最終手段として緊急事態宣言を発することができるとしています。自民党は「特に必要があると認めるとき」としていますが、国民民主党の方がより詳細に発動条件を限定しているように感じます。

そして、とりあえずの発動期間は三十日と限定し、再延長を可能とすることで緊急事態宣言の長期化を防ぐ対策もしっかりとされていますね。

最高裁判所によって緊急事態宣言の解除を促すことが可能に

また、国民民主党の緊急事態条項の素案では裁判所による行政の監視についても明記されています。

〔最高裁判所による統制〕
第九十五条の五 緊急事態の宣言が発せられた場合又は延長された場合において、いずれかの議院の総議員の四分の一以上による申立てがあつたときは、最高裁判所は、その宣言の要件が満たされているかを審査し、申立てから三十日以内に判決を行わなければならない。この場合においては、第八十二条第一項の規定〔裁判の公開〕を準用する。

② 最高裁判所は、前項の規定により緊急事態の宣言の要件を満たしていない旨の判決を行ったときは、国会及び内閣に対し、その宣言を解除すべき旨を勧告する。

出典:緊急事態条項の条文イメージ(たたき台素案) | 新・国民民主党 - つくろう、新しい答え。

総議員の四分の一以上による申し立てがあった場合は、最高裁判所は緊急事態宣言の要件が満たされたかどうかを審査し、その申し立てから三十日以内に判決を行わなくてはならない、とありますね。過半数にしてしまうと、全野党がまとまっても与党が過半数の議席を持っているため、与党が審査の必要はないとすれば、最高裁判所が審査できなくなります。それを防ぐために四分の一としたのでしょうか。

また、最高裁判所が「これは緊急事態制限の発動要件を満たしていない」と判決した場合は、緊急事態宣言の発動を判断した国会・内閣に対して解除すべきだと韓国ができるようになります。国民民主党の改憲草案においては裁判所が行えるのはあくまでも勧告で、裁判所は緊急事態宣言を終了させる権限を持っていないということになります。

んー...正直僕は裁判所に緊急事態宣言を終了させる権限を与えた方が良いと思うんですよね。勧告をしたところで、時の政府がその勧告に従わなければ緊急事態宣言は解除されないわけで。となると裁判所は何のためにあるの...?となりませんか。

たしかに日本は三権が分立しているので裁判所が強制的に緊急事態宣言を解除させてしまえば、司法が行政・国会に介入することになります。これはもちろん望ましいことではありませんが、人権がかかわっていることなので、そこは踏み込んでほしかったなと思います。ただ裁判所について全く触れていない自民党の改憲草案よりはかなり良いと僕は思います。


ということで、長々と緊急事態条項について考えてみました。個人的な私見ではありますが、自民党はどちらかというと権力寄り、国民民主党は国民寄りのものだなと感じます。自民党は解釈によって権力が暴走しかねないし、暴走をストップさせる抑止力もかなり弱く、権力者にとって都合の良いようにできてるように感じます。国民民主党はその点しっかりと考えられていてはいるけど、あとちょっと...という感じですかね。

どちらにせよ憲法改正の議論にすら参加しない政党もあったり、憲法審査会に参加する人をサルだの蛮族だの中傷した立憲民主党の某議員よりはどちらもマシであると思います。マジで「立憲(憲法を制定するという意)」と言っておきながら、憲法について真剣に議論する人たちをそうやって誹謗中傷するとか、「立憲」を名乗るのやめたらどうかと思います。